ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~  三上延

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読むのを中断しているシリーズ物のいくつかを、今年は再開しようとまず選んだのがこのビブリア古書堂です。
今回は太宰治の『晩年』で、太宰自身が持っていて書き込みをした稀覯本についての長編です。

『晩年』の稀覯本と言えば、栞子さんが階段から突き落とされて怪我をする原因となった本です。最後には彼女が犯人の田中をだますために、目の前で別の本を燃やして見せることで田中を諦めさせました。本物は今でもビブリアで保管中です。
今回の稀覯本はそれとは別の物で、厭世的だった太宰の心境を反映した書き込みがされている物です。

かつての持ち主だった古書コレクターの富沢と、彼の元に集まる太宰愛好家のメンバー。その中には栞子さんの知り合いの家族もいました。
厳重に管理されていた『晩年』は、当時誰がどうやって持ち出したのか、今それを手に入れようと画策しているのは誰なのか、それが今回の謎になっています。
それに、仮出所中の田中が絡んで来て…。

自分は、絶版になった本が見つかる嬉しさはあっても、稀覯本にはそれほど興味がなく…。もちろん太宰の個人所有の本がどれほど価値があるかは分かっていますが。どんな手を使ってでも所有したいという人は実際にいるのかも知れませんね。
『晩年』を巡る人々の思惑と、思わぬ人同士がつながる展開は読み応えがありました。
人間関係がけっこう複雑なので、人物相関図が欲しかったです。

あと、大輔が田中を一時的にでも信用してメールを交換するというのが信じられないです。恋人に怪我をさせた男ですよ?栞子さんに頼まれて『晩年』についての情報を得るためと言っても、心情的に無理じゃないですか。
最後のへんまで読んで、だから信用しちゃダメでしょうが、って言いたくなりました。

栞子さんと大輔の関係が初々しくて良いのですが、栞子さんの妹がちょっと…。今回はただ二人の噂を広めるだけの活躍?でした^^;
このシリーズもあと1,2巻だそうです。最後まで追いかけて行こうと思います。