鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。  川上和人

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印象的なタイトルは、作者が大学に入るまで鳥にはほとんど興味がなく、サークルでバードウォッチングの手ほどきを受けたら夢中になってしまったということからです。
作者の川上さんは東大農学部と大学院で鳥の研究をし、つくば市にある「森林総合研究所」の研究員として、小笠原の無人島を中心に、鳥の生態調査や保護を続けています。

私も自然や生き物が好きで小さい頃から図鑑を愛読していましたが、鳥にはさほど興味がありませんでした。鳥はすごくカラフルで、卵も青や緑などあって、それがきれいだな、と思っていましたが、生態を調べたいというほどではなかったです。娘は大の鳥嫌いで、鳩がいようものなら走って逃げます^^;

タイトルから分かるように、お堅い学術書ではありません。楽しみながら鳥について知ることができる本です。
まず驚いたのは007ことジェームズ・ボンドが、作者のフレミングが愛読する鳥類研究書の作者名からつけられたということです。これ、ボンドファンでは有名なんでしょうね。鳥類学者のジョン・ジェームズ・オーデュボンの名前も、伊坂さんの「オーデュボンの祈り」で初めて知ったし、勉強になります。
鳥類学者はとても少ないそうで、日本タレント名鑑に載っているモデル、タレントより少ないそうです(笑)社会的ニーズが少ないことを作者は大いに気にかけていて、鳥類学と鳥類学者の普及を目指しておられるようです。

この本が面白いのは比喩の面白さが大きいです。ちょっとモリミーを彷彿とさせます。
生態系を壊す外来種を駆除する話で、外来種が複数いる場合、他方から影響を受けている方を先に駆除するのがセオリーだそうです。そこから料理でも順番が大切だという話になり、「角煮にコーラを入れると隠し味になるが、コーラに角煮を入れると嫌がらせにしかならない」と微妙にずれた比喩が笑えます(笑)

ネズミが突如ミズナギドリを襲い始めたという話では、
「フルーツ好きのOLのように無害な隣人が、ある日突然に肉食化し襲いかかってきたのだ。それはもう、バイオハザードである。」
「本当はミラ・ジョボビッチに頼んで肉弾戦でネズミを殲滅してほしかったのだが」
(ミラはバイオハザードの主演女優)

「森林内で発生する違法行為を少人数の森林官が取り締まるのは、世界各地に出没するルパン一味を追う埼玉県警のようなもの」
など、深刻な内容もユニークな表現で分かりやすく?伝えてくれます。

めったに発見されない鳥の新種を、検証を後回しにしていたせいでアメリカに先に発表されてしまった事など、失敗も正直に書いてあって、その本格的なお詫びの仕方から、この本の出版もお詫びの一部なのかも?と思いました^^;

作者が継続調査してきた島が、噴火によって溶岩に埋め尽くされるなど困難も多いそうです。でも、鳥はやはり飛べるというメリットがあるので、自然環境が変わっても、またいつか戻って来て、そこで種を落とし、新たな植生の始まりとなるというのはいい話だな、と思いました。
鳥に興味がない人も、鳥って面白いな、と思うきっかけになる本だと思います。



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これ、読みたいと思っていて、毎日図書館の新刊情報チェックしているところです(未だに入らない^^;)。やっぱり、面白そうですね。早く入ってくれー。 削除

2017/8/12(土) 午後 9:46 べる 返信する
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あっ。これ、実は気になっていた本です。鳥が好きってわけでもないけれど(私もハト見たら逃げるタイプ)。 削除

2017/8/13(日) 午後 0:50 ゆきあや 返信する
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>べるさん

心惹かれるタイトルですよね。タイトルの付け方って重要ですね。
面白いです^^ネタが印象的すぎて、鳥の印象がちょっと薄れるのが残念ですが(笑) 削除

2017/8/14(月) 午後 9:27 ねこりん 返信する
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>ゆきあやさん

おお、皆さん注目の作品のようですね^^
鳥を見るのは好きなんですけど、調べようという気持ちはなかったので、けっこう勉強になりました。いろんな意味で面白いのでぜひ。 削除

2017/8/14(月) 午後 9:39 ねこりん 返信する