死と砂時計  鳥飼否宇

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中東の架空の小国ジャリーミスタンにある、世界中の死刑囚を収監する終末監獄で起きる事件を解決する連作ミステリーです。
死刑執行に対する反対世論が高まり、各国は死刑囚を抱えて監獄はパンクしそうでした。そこで、ジャリーミスタンは原油輸出に代わる新たな産業として、死刑代行業を始めたのです。
監獄という特異な舞台、しかも世界中の、というところがミソで、監獄内のルールやその国独自の風習がトリックに生かされているものもあります。そこが梓崎優さんの「叫びと祈り」を思い出させます。また、全体を通しての大きな謎と仕掛けがあるのも共通です。

死刑執行前夜に死刑囚が殺されたり、管理する側の監察官が殺されたり、男性と接することのない女性死刑囚が妊娠したりなどの事件が次々に起きます。脱獄を防ぐチップが埋め込んであったり、管理システムや警護も厳重なんですが、けっこう簡単に殺人や事件が起きてますね^^;やはり犯罪能力に長けた者の集まりだからでしょうか。

主人公は日系アメリカ人の青年、アラン・イシダです。母親と義父を殺した罪で収監されています。彼を助手にして事件に当たる探偵役、ドイツ系ルーマニア人のシュルツ老。シュルツは世界を破滅に導こうとした罪ということです。
アランはなぜ両親を殺したのか、シュルツの具体的な罪状は、という二つが、最終章まで明らかにされない謎です。

国の首長サリフ・アリ・ファヒールの気まぐれによって、死刑執行はランダムに決まります。
最も長く収監されている牢名主的なシュルツ、来て間もないアランもいつ刑が執行されるか分かりません。執行が決まれば4日後に執行されます。
カウントダウンが始まる最終章はそれまでの章の伏線が回収され、謎の解明と相まって、スリリングで読み応えがあります。象徴的に使われる砂時計も巧いですね。

さて、問題なのはエピローグです。これでこの物語を凄いと感じるか、がっかりするかは人によって評価が分かれそうです。
私は後者でした。最終章で終わってもストーリー的には特に問題なかったように思うのですが…。このエピローグで物語の様相ががらりと変わってしまいます。
でも、この物語が本格ミステリ大賞をとるほど評価が高いのは、このエピローグがあるからなのでしょう。確かにミステリとしての驚きは大きいです。

読んだ皆さんはどちらでしたか?