三つの悪夢と階段室の女王 増田忠則

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初読みの作家さん。
悪意や復讐など、人の心の暗闇を覗くような短編集。皮肉なラストも特徴です。

マグノリア通り、曇り』
娘を誘拐された男は、犯人がビルから飛び降り自殺をしようとしているのを知り、何とか思いとどまらせようとしますが、犯人は男に様々な要求をしてきます。
過去の無思慮な行動がこんな悪夢につながるとは…まあ、ろくでもない行動なので、しっぺ返しが来るのも仕方がないのでしょうが。
何の関係もない家族が巻き込まれるのは困りますね。それにしても、男を追い詰める方法が尋常じゃなく怖いです。

『夜にめざめて』
パンの工場のラインで働いているため、深夜に行動する男は、周辺で続けて起きている、通り魔事件の犯人と思い込まれて、自警団に付け狙われます。
同じパン工場で働くマリコに協力してもらい、何とか打開策を実行しようとしますが。
全く後ろ暗いところのない男なのですが、周囲の思い込みで追い込まれて行くのが怖いです。でも、こういうことは実際にありそうですね。
自警団に一矢報いた先にある落とし穴が…いやー救いがないですね。

『復讐の花は枯れない』
家族や自分が誰かに狙われていると感じた男は、昔自分が起こした事件に対する復讐だと気付きます。
男は過去にひどい事をやってますが、20数年後まで、復讐の気持ちを持続できる犯人の執念深さに恐れ入ります。しかも、相手の家庭の様子をずっと見張ってたわけですよね。
でも、前に、同窓会で事件を起こそうとしたっていうのがありましたよね。ずっとそんな気持ちを抱えて生きるって辛いだろうな…と思います。

『階段室の女王』
主人公は、自分が住んでいるマンションの階段室で、倒れている女を発見します。その女を嫌っていた主人公は、救急車を呼ぶことを躊躇します。しかし、女のストーカーらしき男に捕まえられてしまいます。このピンチをどのように乗り切るのでしょうか。
次から次に、困難な状況が湧いてきて、なら最初に救急車呼んでいれば、何の問題もなかったじゃない、と言いたくなります。
ラストは、さすが「女王」とタイトルにあるだけの落ち着きようですね。

どれも嫌な話ばかりですが、よく考えられたストーリーで読み応えがあります。

こういう路線ばかりだと、読むのが辛いですが、また違うタイプの話も読んでみたい作家さんです。