ホワイトラビット 伊坂幸太郎

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誘拐組織の下っ端として働く兎田が、組織に自分の妻を誘拐され、組織の金を持ち逃げした折尾を見つけて連れて来いと脅され、折尾を追ってある家に立てこもります。
その「白兎事件」の顛末を描いた物語です。

伊坂さんには珍しい叙述の仕方で、事件を見通す立場に立ったナレーションがあちこちで入ります。
時系列もかなり前後しますし、混乱を防ぐためにも、ナレーションはありがたかったです。

大好きな黒澤が登場するのですが、これほど大きい役割を担っているとは思いませんでした。クールで面倒なことは嫌がるわりには、困っている人を放ってはおけない黒澤の性格が、今回はかなり前向きに作用したのですね。全くの偶然で事件に関わる事になったわけで、本人は途中で関わるんじゃなかったと後悔したかも知れませんが。

それにしても、黒澤の計画には驚きました。
兎田の行動に、そんな意味があったなんて!
後になって、ピースがはまるように事件の全容が明らかになっていく展開は、さすが伊坂さんという感じです。

あと、あのいろんな法則を自分で発見してしまう今村も登場して、事件で一役買っています。

また、事件の陰で明らかになる別の犯罪も、きちんと決着がつけられていて、スッキリします。

『レ・ミゼラブル』と、オリオン座についての話が、要所要所に挟みこまれます。特にレミゼは、登場人物の心情を代弁するように使われ、感動的です。
今村が5年かけて読んだという原作を、読んでみたくなりました。