肺都 エドワード・ケアリー

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「肺都(ランドン)」とは、アイアマンガー一族の呼ぶロンドンのことです。

ロンドン中のごみが集められた屑山を管理するアイアマンガー一族には独自の掟があり、謎の多い一族でした。
その1人クロッドは、物の声を聞くことができ、2巻では、物を自由に動かす力を手に入れます。
アイアマンガー家「堆塵館」で働いていたルーシーは、クロッドと恋仲になり、二人で家を出ますが、住んでいた町に火をつけられ、二人は離れ離れに。
ここまでが2巻までの展開です。

そして、ついに最終巻です。
ロンドンでは、人が次々に物に変わってしまう事件が頻発します。

ロンドンに隠れ住んでいるアイアマンガー一族は、命を狙われます。
クロッドはアイアマンガーに反旗を翻したはずだったのに、結局祖父ウンビットの手の内にいます。その上、元許嫁のピナリッピーといい感じに…この辺り、歯痒い展開なのですが、ルーシーとの再会を願って読み進めました。

一方ルーシーは、闇に閉ざされたロンドンを照らす仕事をしている少年達のグループカンテラ団に助けられ、クロッドの居場所を見つけようとします。
ルーシーは、穢れの町にいた仲間たちを引き連れ、たくましく生き抜こうとしています。
お坊ちゃんのクロッドと、ルーシーの差がここで表れた気がします。

しかし、クロッドも自分のアイアマンガーの血と力を自覚し、持てる能力を最大限に発揮して窮地を脱しようとします。
いけいけクロッド!と応援したくなりました。

自分の住んでいた家や町を失った二人は、再び出会って、安住の地を見つけることができるのか、最後までドキドキさせられます。
特に、議会に出席する女王陛下が登場してからの展開は、唖然とするようなカタストロフィを迎えます。

作者は非常に物に対するこだわりと愛情を持っているようで、このラストにもそれが表れている気がしました。
滅びるべき者は滅び、落ち着くべき所に落ち着いた、納得のラストでした。

それにしても、今回も強烈なキャラクター出て来ましたねー。
「リピット」としか喋れないリピット、こんなすごい力を手に入れて大暴れするとは…。
夜を口から作り出すクロッドの叔母にもびっくりです。
作者のイラストが雰囲気あり過ぎて、強烈な印象を残します。イラストも相まってこの独自の世界観を作り出しているんだな、と改めて感じさせられました。

『望楼館追想』も読みたいけれど、絶版なのが残念!でも、新作準備中という嬉しいニュースも。楽しみです。