ソウル・コレクター ジェフリー・ディーヴァー

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リンカーン・ライムシリーズ第8弾です。
今回の犯人は、個人情報を手玉に取って犯罪に利用します。ありもしない犯罪歴を付け加えて人を破滅させたり、自分の犯罪の証拠を人に押し付けて、その人を犯人に見せかけるのもお手の物です。
そんなサイバー犯罪者522号と、ライムとアメリアは対決する事になります。

そして、犯人に嵌められて逮捕された一人が、ライムのいとこのアーサーでした。
ある出来事から疎遠になった二人ですが、ライムはできる限りアーサーの力になろうとします。

全国民の情報をデータベース化している会社、SSDの関係者ではないかと、ライムは様々な証拠から判断します。

それにしても情報の取り扱い次第で、こんな恐ろしいこともできてしまうんだ…と思いました。
私の家にも、税金対策にマンションを買いませんかとか、お子さんに教材を買いませんかとか、いろんな電話がかかってきますが、個人情報が書いてある名簿をどこかから手に入れてるんでしょうね。
セールスに使われるくらいならまだましだけど、それが悪用されて犯罪に巻き込まれたら…と思うと怖いです。

今回の犯人みたいに、コンピューターの扱いを熟知していて、情報をどんなふうにも改竄できて、しかもその痕跡も残さないとか、これからはそんな犯罪も増えて来るのかな、と思ってしまいました。

SSDのデータベースにあるアメリアの情報は信じられないほど細分化していて、これを見ると個人のプライバシーってものはないに等しいと感じます。
でも、それを元にライムは、犯人を追ったまま行方不明になったアメリアの行方を見つけられないかと調査します。

情報は使い方次第で、悪にも善にもなるのだとよく分かりました。願わくはこの物語のように悪用しようという人が現れませんように。
テーマから考えると、原題の『Broken Window』の方がいいですね。「社会を良くするには、小さな問題から」という意味だそうです。

サブストーリーのリンカーンとアーサーの確執ですかが(二人とも名字がライムなので、ファーストネームにします)アーサー、ずいぶんと酷いことをリンカーンにしてたんですね。これもアナログではありますが情報を改竄する犯罪ではないですか。
女性を巡る確執だけかと思ったら…。顔を合わせたくないのももっともです。よく助ける気になったものです。
事件解決後そのまま疎遠になる二人だと思っていたら、思わぬ心温まる展開が待っていました。リンカーンはアーサーを許すことができるのでしょうか。

そして、ラスト近く、ライムの手から逃げおおせた犯罪者が登場します。それまで、522号の事件と並行して、別の犯罪者を追うサブストーリーが描かれていたのですが、なぜこれがあるのかと思ったら、そういうことでしたか!続巻の展開が楽しみです。