ロボット・イン・ザ・ガーデン デボラ・インストール

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ベンの家の庭に現れた、あり合わせの部品を寄せ集めて作ったようなレトロなロボット。始めはアクリッド・タングという自分の名前と、オーガストと言う言葉しか話しませんでした。ベンの妻のエイミーは、タングを気にかける夫に愛想を尽かして出て行ってしまいます。冷却装置の壊れかけた彼を直そうと、地球を半周してタングを作った博士を訪れるベンとタングの旅、二人の心の交流と、タングの成長を描いた、心温まる物語です。

見た目もスマートでできることも多いアンドロイド全盛の時代に、タングはポンコツと言ってもいいようなロボットでした。でも、タングが他のアンドロイドやロボットと違うのは、感情を理解し、内面が成長していくということです。
子供のいないベンにとって、タングは息子のような存在になります。実際、言い出したら聞かなかったり、すねたりと、タングは子供そのままの行動をとります。手がかかりますが、無邪気で新しい物事に興味津々な様子が愛らしく、 たまに示す愛情表現には、ベンと同じようにグッと来てしまいます。

ベンがエイミーを今でも大切に思っていることを感じ取って、自分なりにエイミーのためにできることをしようとする様子がけなげです。
また、子供が大人のお手伝いをしながら、生活に必要な技能を身につけていくように、タングも目玉焼きなどの料理を始め、始めは上手く作れなかったけれど、だんだんと上達します。
始めはタングを邪魔に思っていたエイミーも、タングが自分を守ろうとしていることが分かり、頼りにするようになります。

この物語のポイントは、タングを作った博士にタングを任せた方が彼のためになるのではないかとベンが逡巡するところ、ベンの元を去ったエイミーとやり直すことができるのかということです。障害になる出来事もいろいろと起こるのですが、タングのおかげでベン自身成長していくので、乗り越えて行くことができます。

登場人物と同様に、タングのことが愛おしくてたまらなくなります。
ベルリン国際映画祭に、作者の代理人がタングのぬいぐるみと一緒に参加したそうで、そのぬいぐるみがほしくなりました。映画化されるといいですね。