本と鍵の季節  米澤穂信

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図書委員会に所属している、高2の堀川次郎と松倉詩門が、身の回りの謎を解いていく連作短編ミステリです。
堀川は真面目に仕事をする、能ある鷹は爪を隠すタイプで、松倉は委員会の仕事はさぼり気味、要領が良く見た目もイケメン、切れ者の印象です。

よくあるほのぼの学園ミステリではなく、ちょっとビターな味わいが特徴。
図書委員会だけあって、本が関わる謎や小ネタが出てくるのが楽しいです。例えば、新着図書受け入れの時に本の上下に押す天地印の話で、「なんかこう…世界のバランスを保ってる感じがしないか」「するな」「火山に捨てに行った方がいいかな」「天地の均衡が破れるぞ」これはもちろん「指輪物語」を意識した軽口です。ここで本の名前は出てこないので、知っている人だけが楽しめるということに。いくつかは気づいたけど、気づかなかったものもたぶんだいぶあるような気がします。

本が関わる謎については、ビブリア古書堂ほどガッツリしたものではなく、ラベルの図書分類番号や本の装備についてなど、いかにも図書室らしいものが多いです。それなのにビターって…殺人事件などはないのに、謎に関わる人にまつわる物語がビターなんですよね。松倉の家族についての謎も出てきますが2人の関係を変えてしまうのではないかと思うほど深刻です。

読書好き、図書室好きの心をくすぐるし、ビターな味わいも癖になりそうな感じなので、ぜひシリーズ化してほしいです。堀川と松倉のコンビも気に入りました。