魍魎の匣 監督 原田眞人

京極堂、榎木津が前作の「姑獲鳥の夏」と同じ堤真一阿部寛、関口だけ永瀬正敏から椎名桔平に替わっています。永瀬正敏の関口はいいなと思っていましたが、椎名桔平は歯切れが良すぎますね…w原作にあった、「匣に魅入られる寸前」まで行くような不安定な人にはまるで見えません。
 堤真一阿部寛は私が原作で感じたイメージとは違うけど、映画で見たらこれはこれでいいかな、と思いました。堤真一は好きな役者さんだし。宮迫の木場、宮藤官九郎久保竣公は……ですね^^;久保竣公については他のサイトで話題になってました。ミッチーが適役じゃないかと。私もそう思います。

以下ネタバレありです。反転してお読み下さい。

原作は弁当箱と言われたほどの、ノベルスとしては長い作品ですから、原作通りの映画化はできないのは無理もありませんが、物語の要になる部分が変更されていたのはびっくりしました。それは「なぜ久保竣公が箱の中の少女に取り憑かれたのか」ということです。箱の中で生きている美しい少女を見たことがきっかけだったのに、失敗作がきっかけにされたのでは、もう根本からして違うんじゃないか、という感じです。生命維持装置に入っていない頼子がかみつくというのも変です。あれは原作の久保竣公が美馬坂にかみつくというところを持ってきたのでしょうが、久保はちゃんと生命維持装置に入っていたからできたんだし…最後の「ほう」もそのあたりをちゃんと考慮してないから出ちゃったんでしょうね。 原作がとても陰惨なイメージなので、少しでも明るくしようとしたのか、妙に主役3人の掛け合いが漫才ぽいです。京極堂も無駄に明るいです^^;前作の映画ではかなり長い時間を割いていた得意の蘊蓄も今回は「あれ?」って感じでしたし。ごく普通の人に見えましたね、今回の京極堂は。関口もですけどw でも、上海ロケで再現された昔の東京の様子はなかなかよかったし、生命維持装置に入っている加菜子を美しく見せようという試みは成功してると思いました。映像的に、はっとするようなところはあったと思います。
 私も原作をずいぶん前に読みました。京極夏彦の作品では一番人気の作品だそうですし、よけい原作ファンには異論のある映画と思います。でも私は原作とは別物の映画としてけっこう楽しめました。上に書いたように整合性のないところはありますが、原作に忠実に作ると、原作を読んでいない人はますますついて来れない映画になったのではないでしょうか。エンタテイメント性を高めるための改変や演出があったのは仕方のないことだと思います。あの長い作品を映画化して、ここまでもってきたということだけでも拍手です。

 次は「狂骨の夢」ですか。関口は誰になるんでしょうね…。