夜は短し歩けよ乙女  森見登美彦

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一目惚れしてしまった黒髪の乙女の行く先々に出没し、彼女の目に何とかとまろうとする「先輩」ですが、彼女からは「奇遇ですねえ!」の一言。彼女の外堀を埋めることに終始し、なかなか距離は縮まりません。そんな二人の周りには不思議ではちゃめちゃな出来事の数々が…。

楽しい!その一言です^^まるで、昔ながらのおもちゃがいっぱい入った箱をひっくり返したような感じです。毎日縁日、って言ってもいいかも^^モリミー独特の古風な言い回しが、京都の情緒あふれる町並みに合いますね。装丁も内容にぴったりです。
宙を漂う樋口や、降ってくる錦鯉、三階建ての宴会場のようなバス、あり得ないこともお酒とばか騒ぎにまぎれてすんなり受け入れてしまいます。
町の重要人物李白、羽貫に樋口、閨房調査団の面々…怪しい人ばかりなんですが、お祭り騒ぎを盛り上げる底知れぬパワーを感じます。このメンバーと一緒に夜の京都の町をねり歩きたくなりました^^

二章の「深海魚たち」では本に関する森見さんの蘊蓄が聞けます。
それに、こんなところでジェラルド・ダレルさんの名前が出てくるなんて!100円で買ったその本が「風とけものと友人たち」でなく「鳥とけものと親類たち」だというところに古本事情が出てますね^^; そして、ビネッテ・シュレーダーの描いた美しい絵本「ラ・タ・タ・タム」!一気に森見さんへの親近感が高まってしまいました。迷宮のようにつらなる古本市に私も行きたいです^^
好きな本を手に入れるために、猛暑我慢比べをする熱意にはさすがに負けますが…火鍋って読んだだけでも汗出そうです^^;
本を愛する人なら、この章の楽しさにはどっぷりとはまるはずです^^

三章の「御都合主義者かく語りき」は学園祭事務局長、パンツ総番長など、またまた楽しいメンバーを加えて、学園祭のゲリラ演劇を中心に進みます。私のお気に入りは「韋駄天コタツ」です(笑)どこに現れるか分からないコタツで、そこへ行くとおいしい鍋が食べられます^^コンロ持参なんですね~(笑)あ~ここでぬくぬくしたい!みかんも食べたい!
大きな緋鯉のぬいぐるみを背負って歩く彼女、かわいいですね^^このあたり、男性陣の心を直撃しそうです(笑)速攻で台詞を覚えてしまう頭のよさにはびっくりですが。
そして今まで外堀を埋めるばかりだった彼と彼女の間柄にも少しずつ進展が…。

四章では、風邪の神が吹き荒れる京都の町に、彼女が特効薬と卵酒で立ち向かいます。
竜巻に巻き上げられ、夢と妄想と現実がごっちゃになった展開は、「太陽の塔」を彷彿とさせますね。それにしても李白…何者ですか(笑)
今までの涙ぐましい努力が実った彼に心から拍手です^^

これほど面白い本だとは正直思っていませんでした。最初から最後までわくわくしっぱなしでした^^この愛すべきキャラクター達にまたどこかで会いたいです。