少女には向かない職業  桜庭一樹

イメージ 1 舞台になっているところは、山口県下関市のとある島。今では橋がかかって自由に行き来できる、というところから、実際の地名が分かりました。近くではありませんが、よく知っている場所だったからです。というわけで、なんとなく身近に思いながら読み始めました。
中学生時代って、特に友達の影響が大きく、友達の輪からはずれることだけはしたくない、という気持ち思い出しました。「奇妙な万能感」「この世で一番強いのは中学生の女の子だ」…分かる分かる。
 葵と静香のように家庭に恵まれない場合、よけいに友達がすべてになってしまうでしょう。友達と一緒にビルから飛び降りたというニュースを聞いたことがあるけれど、子どもの考えや世界ってほんとに狭くて、他に打開策があるとか、先にいいことがあるかもしれないとか、そういうこと考えられないで、「これしかない」って思いこんでしまうことが多いように思います。寂しかったりつらかったりした時、自分に共感してくれる人がいれば、無条件で受け入れてしまうような、少女の危うさを二人から感じました。

 殺人で使おうとした凶器は、すりこぎ、菜種油、冷凍マグロ、バトルアックスと、冗談のような物ばかり。でも、二人は真剣に実行に移そうとします。この現実を何とかしたい、と必死に考えた上で。そしてそれが実現してしまったときの重みと後悔。「少女の魂は殺人に向かない」プロローグにあるこの言葉が、ラストにつながります。ほんとに、誰か教えてあげる人がいたら、支えてあげる人が他にいれば、と思わずにはいられません。

 桜庭さんの作品は、長編はこれが初めてでした。ライトノベルぽい感じで一日で読み終わりましたが、内容は深いなあと思いました。
 この本(ミステリ・フロンティア版)はずいぶん前に中古屋で買ったのですが、表紙をめくると、そこには金色のペンでサインがしてあって、そばに桜の花のシールがはってありました。シールが桜庭さんの名前と共通点あるし、いたずらじゃなさそうと思って購入しました。後日サイン本を集めている人のブログの写真で、間違いないことを確認しました。桜の花は、「少女には…」だけに貼ってあるシールだそうです。直木賞を取ったあとなら、中古屋に売る人はいなかったでしょうね^^;だけど、本棚に入れてずっと読んでなかった私って…^^;赤朽葉家もそうならないように早めに読みたいです。

 あと、この作品はドラマ化されているそうですね。酒浸りの義父に萩原聖人、浩一郎に要潤っていうのはびっくりな配役です。DVDが出てるそうなので、見てみたいです。