ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女  スティーグ・ラーソン

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2009年のベスト10を賑わわせたこの作品ですが、大作でしかも社会派ミステリということで敷居が高く感じていました。でも、図書館の休館で長期の貸出ができたので、まとめて6冊借りてみました。
雑誌「ミレニアム」の発行責任者であるミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴露する記事を発表しますが、名誉毀損で訴えられ、裁判で負けてしまいます。失意の彼に、大企業の前会長ヘンリック・ヴァンゲルが仕事を依頼してきます。40年前に失踪した兄の孫娘ハリエットについての手がかりを探してほしいというものでした。
一方で、セキュリティー会社の優秀な調査員であるリスベットは、ヘンリックの弁護士に依頼されてミカエルの身辺調査をしたことから、この事件に関わりをもつことになります。
 
まず始めにヴァンゲル家の家系図、同じ姓がずらりと並んだ登場人物一覧に目を丸くすることと思います^^;ヴァンゲルグループの中でのお家騒動がメインの上、ミカエルの仕事が公にはヴァンゲル家の評伝執筆ということで、代々の歴史についても語られるので、どうしてもこうなるんですね^^;でも、ヴァンゲル家のメインの数人だけ覚えておけばOKなので、歴史の辺は軽く読み飛ばしていいと思います。
 
スウェーデンの有名な児童文学「名探偵カッレ君」になぞらえられたミカエルは、正義感が強く人に好かれるタイプです。でもリスベットほど切れ者ではなく、女性の誘惑に弱いので、優柔不断な感じも受けます。「長靴下のピッピ」になぞらえられたリスベットは非常に優秀な頭脳を持ち、ハッカー、調査員としての腕は超一流です。しかし人との関係が上手く築けない一匹狼です。
この二人が始めはそれぞれの立場で行動していますが、そのうちに手を組んで事件に当たるようになります。リスベットの情報収集のおかげで新事実が次々に明らかになり、そこからの展開は加速度的で、ページをめくる手が止まらなくなります。
 
スウェーデンでは男性から暴力を受けた女性の割合が40%を越えるそうです。そういう事実をふまえての展開だと思いますが、衝撃の真実は特に女性にとってはやり切れないものです。現実の虐げられた女性達の立場を擁護する意味もあるのでしょう。リスベットを代表する女性達がどこまでもまっすぐで信念を持って行動しているのに対し、男性達の行動が物足りなく思えるのは、作者の意図でもあるようです。
 
ヴェンネルストレムに一泡吹かせたラストはカタルシスを感じるものではありましたが、何もそこまで…と思ったのは私だけでしょうか^^;別で進行していた恐るべき犯罪の犯人と違い、ヴェンネルストレム本人が全く表に出てこないので、そこまで感情移入できないというのが正直な所です。
 
作者はシリーズ発売直前に亡くなられたそうです。大成功を見ることもなかったのですね…。次作「火と戯れる女」でもメインの登場人物は同じです。本作のラストで(゚o゚)ヾ(--;オイオイ...とツッコミたくなったミカエルの行動ですが、次作でリスベットとの関係はどう変化するのか…気になるところです。また、本作で語られなかったリスベットの過去も明らかになるかも?