2017-01-01から1年間の記事一覧

2017年のマイベスト10

今年も紅白をバックに2017年の読書生活を振り返って行きたいと思います。 海外作品をまあまあ読んだので、ひさびさに国内、海外別にランキングを出したいと思います。 【国内】 1 『蜜蜂と遠雷』 恩田陸 ピアノの演奏を文章でこんな風に表せるのだとい…

書架の探偵 ジーン・ウルフ

推理作家であるE・A・スミスの複製体(リクローン)である主人公は、図書館で借り出される「蔵者」です。 作家から直接話を聞けるというのはその作家のファンからすれば、夢のような話ですが、大富豪の娘コレットがスミスを借り出したのは、そういう理由ではあり…

月の部屋で会いましょう レイ・ヴクサヴィッチ

34編もの短編が所収の、奇想としか言いようがない短編集です。 まず、一編目の『僕らが天王星に着くころ』を読めば、その奇想のほどが分かるでしょう。 次第に、体の表面が宇宙服に変わり、全部が変わってしまうと、体が浮かんで宇宙に向けて旅立ってしまう…

友罪 薬丸 岳

自分の親友や恋人が、子供の時、世間を震撼させるほどの重大犯罪を犯していたら、それを知る前と同じように付き合っていくことができるか、という重いテーマの作品です。 映画化もされていて、犯罪を知る側である益田を生田斗真くん、犯罪の当事者の鈴木を瑛…

三つの悪夢と階段室の女王 増田忠則

初読みの作家さん。 悪意や復讐など、人の心の暗闇を覗くような短編集。皮肉なラストも特徴です。 『マグノリア通り、曇り』 娘を誘拐された男は、犯人がビルから飛び降り自殺をしようとしているのを知り、何とか思いとどまらせようとしますが、犯人は男に様…

ミステリークロック 貴志祐介

防犯探偵榎本シリーズの最新作です。4編のうち、2編はすでにドラマ化済みです。哀川翔さんと藤木直人さんのぶんですね。 貴志さんのインタビューを読みましたが、ドラマ版を気に入って下さっていて、大野くんの榎本径も適役だと感じておられるようです。ドラ…

ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~ 田中経一

佐々木は、死を前にした人間が最期に望む思い出の料理を作ることを生業にする料理人です。 しかし、彼の元に、あるレシピを探してほしいという依頼が舞い込みます。 それは、戦時中の満州で、満漢全席を超えるフルコースのレシピを作成することを軍から請わ…

きのこくーちか  新國みなみ

「くーちか」とはロシア語で「仲間」という意味です。 ロシア人で雑貨店の買い付けをしているワーニャと、きのこが大好きで、きのこ雑貨を作っていて、個展も開いているゆん太の同居&きのこ生活を描いています。 まず表紙に惹かれました。ベニテングタケ、…

幽談  京極夏彦

装丁が洒落ていて、京極さんかと思ったら違う人なんですね。鶯色の和紙が最初と最後に挟まっていて、そこから第一話がもう始まり、最後の話もその和紙で終わっています。 「手首を拾う」 妻よりも拾った手首に執着する、フェティストの物語なのですが、情景…

死と砂時計  鳥飼否宇

中東の架空の小国ジャリーミスタンにある、世界中の死刑囚を収監する終末監獄で起きる事件を解決する連作ミステリーです。 死刑執行に対する反対世論が高まり、各国は死刑囚を抱えて監獄はパンクしそうでした。そこで、ジャリーミスタンは原油輸出に代わる新…

AX  伊坂幸太郎

凄腕の殺し屋「兜」は、家では妻に頭が上がらない恐妻家です。一人息子の克巳もいて、家族のためにも仕事から引退しようと思いますが、仕事を斡旋する「医師」は一筋縄では行かず…。 「マリアビートル」以来の殺し屋シリーズです。「マリア~」の新幹線での…

あなたの人生の物語  テッド・チャン

「夏に一冊はSFを読もう!」今年の私的課題図書です。 映画『メッセージ』を観た後、その原作であるタイトル作だけ読んだのですが、今回始めから読み直しました。 寡作ながら、所収の作品でその評価を確定的にした短編集です。チャンは短・中編しか書いて…

にっぽん氷の図鑑  原田泉

「氷の図鑑」と銘打っているだけあって、人気かき氷店の様々なかき氷がこれでもかと並んでいます。 子供の頃それほどかき氷を食べた記憶はなく、今でもたまにしか食べない私ですが、見るのは大好きです。花の図鑑のように色鮮やかな氷の図鑑は見ても楽しめま…

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。  川上和人

印象的なタイトルは、作者が大学に入るまで鳥にはほとんど興味がなく、サークルでバードウォッチングの手ほどきを受けたら夢中になってしまったということからです。 作者の川上さんは東大農学部と大学院で鳥の研究をし、つくば市にある「森林総合研究所」の…

ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル  今野敏

色シリーズを順調に読み進めていたのに、これだけちょっと間空きました。 世界的なバイオリニスト柚木優子のストラディバリウスが盗まれる事件が起こります。 STのメンバーが捜査を続けるうちに新たな事件が。 今回は緑ということで、驚異的な聴力をもつ結…

夜の夢見の川  シオドア・スタージョン他

はずれがなかった「奇妙な味」のアンソロジー『街角の書店』に続く第2弾です。 全12編のうち、特に心に残った作品を紹介します。 「麻酔」 クリストファー・ファウラー 歯医者でいつもと違う臨時医の治療を受けた男の悪夢を描いています。 これ、入るアン…

フロスト始末  R・D・ウィングフィールド

デントン署の名物警部ジャック・フロストが、数多くの事件に奔走する人気シリーズ最終巻です。いよいよ最後ですか…。作者が亡くなったため、新作はもう読めません。 食事の時間も睡眠時間もとるのに苦労しながら、フロストと部下達は事件解決のために駆け回…

宇宙探偵マグナス・リドルフ  ジャック・ヴァンス

白髪白鬚、哲学者であり数学者の顔も持つ、宇宙を駆け巡るトラブルシューター、それがマグナス・リドルフです。 落ち着いた物腰で丁寧な言葉遣い、一見大学教授のようですが、さまざまな事業を手がけ、儲けているはずなのにいつも借金取りに追われています。…

忍びの国  監督 中村義洋

最強の伊賀忍者と称される無門と、織田信雄(のぶかつ)率いる織田軍との戦い(天正伊賀の乱)を描いた物語です。また、無門と最愛の妻お国のラブストーリーでもあります。 映画の前に舞台挨拶のライブビューイングがありました。 大ちゃんが全国の観客に向…

穢れの町  エドワード・ケアリー

第一巻「堆塵館」がとんでもないクリフハンガー状態で終わって、次が読みたくてたまらなかったのですが、読み終わってすぐに2巻が出たので良かったです^^ 今回の舞台は、ルーシーの故郷フィルチング。ごみで汚染されたその町は「穢れの町」と呼ばれていま…

堆塵館  エドワード・ケアリー

ロンドンの外れにある巨大なごみの堆積場に、「堆塵館」と呼ばれる屋敷があり、そこにはごみの中から有用な物を掘り出して財をなした、アイアマンガー一族が住んでいました。 その一人、クロッド・アイアマンガーを中心に、独自のしきたりと不思議な出来事を…

化学探偵Mr.キュリー3  喜多喜久

四宮大学庶務課の七瀬麻衣が学生から持ち込まれた事件を、理学部化学科の准教授、Mr.キュリーこと沖野が解決するシリーズの第三弾です。 「化学探偵と呪いの藁人形」 昔取った杵柄で、研究室同士のソフトボールの試合にかり出された麻衣。その一方で、双子…

蜜蜂と遠雷  恩田陸

芳ヶ江国際ピアノコンクールに臨む4人の、第一次予選から本選までを追った物語です。 始めに選択すべき課題曲一覧、その後各登場人物の選んだ演奏曲一覧がずらりと並び、読者もこれからコンクールを聴きに行くような気持ちにさせられます。 コンテスタント…

リバース  湊かなえ

先日から始まった、藤原竜也さん主演ドラマの原作です。ひさびさに、一日で本を読み終わりました。 深瀬和久は、珈琲を上手に入れることが唯一自慢の、平凡なサラリーマンです。 なじみの珈琲店で出会った美穂子とつきあい始めますが、彼女の元に「深瀬和久…

ウォッチメイカー  ジェフリー・ディーヴァー

リンカーン・ライムシリーズ第7弾です。 今回の犯人は、犯行現場に月齢を表す絵のついたアンティークの時計を置いていく、「ウォッチメイカー」と呼ばれる男です。 原題は「The Cold Moon」で、こちらの方が雰囲気あるような気がするんですが。 ウォッチメ…

今年の4月3日は

今日は、ウン十三回めの誕生日です。 転勤になり、新しい職場での初日で緊張した一日でしたが、 上司が誕生日を祝うのが趣味らしく、バースデイカードをもらった上に、 みんながバースデイソングを歌ってくれて驚きました。 こんなことは初めてだったので嬉…

有頂天家族 二代目の帰朝  森見登美彦

「阿呆の血のしからしむるところ」の無鉄砲な下鴨矢三郎を中心に、狸の下鴨四兄弟の騒動を描く物語第二弾です。 天狗の赤玉先生の二代目が英国から戻って来るのですが、赤玉先生との確執、かつて一騎打ちをした犬猿の仲である弁天とのその後は?というのが物…

傘をもたない蟻たちは  加藤シゲアキ

NEWSのシゲの初短編集。長編は読んでないので、自分にとって初シゲ小説になります。 ちょっと驚いたのはタイトル作がないって事です。調べてみると、「様々な困難な状況下で戦おうとする登場人物たち」を蟻になぞらえたそうです。ドラマ化もされていて観…

ラ・ラ・ランド  監督 デイミアン・チャゼル

女優を目指し、オーディションを受け続けるミア(エマ・ストーン)と、自分の店を開くことを願うジャズピアニストのセブ。(ライアン・ゴズリング)二人の恋と、夢の行方を描くストーリーです。 実は、ミュージカルは苦手で^^;何で唐突に歌ったり踊ったり…

一角獣・多角獣  シオドア・スタージョン

『異色作家短篇集』第3巻です。旧版では一番手に入りにくかったというマニア垂涎の書も、今では手軽に…とは言わないまでも(けっこうお高い)読むことができるのはありがたいです。 解説にもなかったので自分で原題の意味を調べてみたのですが、「E pluribu…