フロスト始末  R・D・ウィングフィールド

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デントン署の名物警部ジャック・フロストが、数多くの事件に奔走する人気シリーズ最終巻です。いよいよ最後ですか…。作者が亡くなったため、新作はもう読めません。

食事の時間も睡眠時間もとるのに苦労しながら、フロストと部下達は事件解決のために駆け回ります。今回もいつも以上に事件が錯綜します。

メインの事件は、少女の連続強姦殺人事件です。他にも失踪している少女や、暴行を受けた少女、それらはつながっているのか、別の事件なのか…。それに、スーパーマーケットの脅迫事件も同時進行で、一つの事件の捜査をしていると、そこに他の事件の連絡が入り、その上、フロストを目の仇にする署長のマレットから呼び出しが入り…体がいくらあっても足りないくらいです。しかもマレットが他の署の麻薬捜査に気前よく人員を投入したため、デントン署は深刻な人員不足なのです。
これほどこんがらがった事件が、最後には収拾がついてしまうのが不思議です。
しかも驚きの展開もありです。

事件の性質上陰惨な表現も目立ちますが、フロストのいつものお下品な軽口で、重くなりすぎないのが救いです。ていうか、フロストの会話の半分はその軽口なんですが^^;

事件に忙殺されるだけでなく、もう一つのピンチが。デントン署に赴任してきた主任警部スキナーが、マレットと共謀して、フロストを他の署に飛ばそうと画策します。
スキナーは、地道な捜査はフロストにさせ、自分は居丈高に命令だけしておいしいところを持って行こうとする嫌なヤツです。スキナーに比べればまだマレットの方がましかも。フロストは異動というピンチをどうやって切り抜けるのか、それともほんとに異動なのか?も見所です。

前回から登場の“タフィ(芋にいちゃん)”ことモーガン刑事、よくそれだけ失敗できるな、っていうくらい今回も失敗続きですが、フロストもよく面倒見てますね(笑)
そして、見習い婦人警官のケイトが登場します。ある理由でスキナーに目をつけられいじめられるのですが、「一緒に異動しよう」というフロストの誘いを「逃げるようで嫌です」とはねつける強さを持っています。ケイトの活躍がもっと見たかったなあ…。
そう言えば、麻薬捜査にかり出されたのか、バートン部長刑事とリズ・モード部長刑事がいなかったのが残念でした。

いい加減で出たとこ勝負みたいなところもあるフロストですが、犯人を憎む気持ちと事件解決に向ける熱意は人一倍です。部下もけっこう酷使されてるのですが、それでもフロストが慕われるのはそういうわけなんでしょうね。

亡くなった奥さんを思うシーンが何度も出てきます。大切に思っていたのに、どこかで掛け違ってしまったまま、奥さんは病気で亡くなっていました。その事がいまだにフロストの心を苛むのです。
だから、新任の検死官、キャロルと上手くいくといいですね。
あ~続きが読みたい!

ところでいいニュースが解説にありました!
遺族の許可をもらって、巡査部長時代のフロストを描く新シリーズが別の作家さんによって書かれているそうです。
本国ではもう三作も出ているそうなので、このシリーズも今後訳されるかも知れません。楽しみです^^