夜の夢見の川  シオドア・スタージョン他

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はずれがなかった「奇妙な味」のアンソロジー『街角の書店』に続く第2弾です。
全12編のうち、特に心に残った作品を紹介します。

「麻酔」 クリストファー・ファウラー
歯医者でいつもと違う臨時医の治療を受けた男の悪夢を描いています。
これ、入るアンソロジー間違えてませんか?絶対『嫌な物語』でしょう。最初に持ってくるっていうのはどうかと…。歯医者に通う全世界の人間を敵に回しましたね。

「お待ち」 キット・リード
母娘で車で旅行した二人は、ある町に立ち寄ります。母は体調を崩し、しばらくこの町に滞在することになりますが…。
このアンソロジーにぴったりな不条理系。その町独自の奇妙な慣習「お待ち」が怖いです。

「終わりの始まり」 フィリス・アイゼンシュタイン
亡くなったはずの母から食事の招待を受けたリーアは、ショックを受けながらもそれを受け入れます。母がリーアを招待した理由とは。
なるほど…心配な気持ちは分かりますが、ずいぶん大がかりな力を使ったものですね。母は強し!です。

「銀の猟犬」 ケイト・ウィルヘルム
2匹の美しく不気味な猟犬に家に居着かれた恐怖。
夫の言うままにしてきた不満と焦燥感が、猟犬によって煽られていく様子がひりひりするような実感を伴って描かれます。嫌な話なのですが、最後にもうこれしかないだろうっていう方向に進んでいくので、ある意味ホッとさせられます。

「心臓」 シオドア・スタージョン
病弱な青年を好きになった女性が、作家に告げた話とは。
短い話ですが、もの悲しい中に驚きのポイントもある印象的な物語です。

「アケロンの大騒動」 フィリップ・ホセ・ファーマー
女性のことで大げんかになった二人は、銃を取り出して一人が亡くなります。そこに不思議な力を持つドクターが通りかかり…。
こういうトンチの効いた軽めな話が1つは入ってないとですね。一息つけます。

「夜の夢見の川」 カール・エドワード・ワグナー
護送車が事故に遭い、逃げ出した女性は、女性2人が住む古風な屋敷に迷い込みます。
そこで丁重な扱いを受けるのですが。
ファンタジックなタイトルとは違う方向ですね。登場人物の名前からゴシックホラーかと思いましたが、それともちょっと違う、官能的な物語です。

一番心に残ったのは「銀の猟犬」です。「夜の夢見の川」は独特な雰囲気に思わずひたってしまいます。
なかなか良質なアンソロジーのシリーズなので今後も続けてほしいですね。
ただ、スプラッタ系のホラーは避けてほしいです^^;