傘をもたない蟻たちは  加藤シゲアキ

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NEWSのシゲの初短編集。長編は読んでないので、自分にとって初シゲ小説になります。
ちょっと驚いたのはタイトル作がないって事です。調べてみると、「様々な困難な状況下で戦おうとする登場人物たち」を蟻になぞらえたそうです。ドラマ化もされていて観てますが、「恋愛小説(仮)」と「にべもなく、よるべもなく」のエピソードしか印象に残ってないです^^;

「染色」
美大生の市村は、グラフィティアートを製作する美優に出会います。二人でアートを描き、濃い時間を過ごしていくのですが…。
二人のアートに対する温度差や個性、相手に与える影響など、腕を染めるという行為で様々に表しているのが印象的でした。

「Undress」
脱サラを見事に成功させたと思った男が陥った罠。
これはミステリ的な展開です。けっこう伏線が張ってあったり。
ボールペンのくだりは想像するとシュールですね。

「恋愛小説(仮)」
女性をイメージして文章を書き始めると、それが夢に現れるように。主人公はかつて好きだった女性を想って次々に物語を綴ります。
ありそうな感じではあるのですが、夢の中の女性に希望を聞いて、それが次のストーリーにつながるというのが面白いです。

「イガヌの雨」
素晴らしく美味な生物イガヌが空から降ってくるようになり、それに翻弄される人々と、祖父から食べることを禁じられている少女の物語です。
見た目がグロ過ぎるのに、陶酔を呼び起こすような味…そういう食べ物って実際けっこうあるような気がします。禁じられているものって、何にしろ魅力的ですよね。
ほろっとさせるようでいて、皮肉な終わり方も良いです。

インターセプト
みんなのマドンナ的女性を口説き落とそうと策を巡らす男。それは上手くいったかに見えましたが…。
コワいですね、これ。自信を持ちすぎた鼻持ちならない男がしてやられるのが、女性側から見るとスカッとしそうでしないのは女性キャラのせいかも。

「にべもなく、よるべもなく」
人気者の先輩の思わぬ姿と、親友のケイスケのカミングアウトに動揺する純。今まで通りの付き合いができなくなってしまうのですが…。
自己嫌悪に駆られながら、自分の気持ちに嘘はつけない純の心情がリアルに描かれています。漁師の根津爺のキャラもいいです。

シゲの文章好きだな、と思いました、時折ふっと気になる表現が現れて来ます。お互いの電話番号だけを描いたキャンバスを、「22桁の作品」って表現したり。「喜びは有限、悲しみは無限」ていうのも印象的なフレーズでした。
性描写が必ず出てくるのがこの短編集の特徴で、(「イガヌの雨」には出てきませんが、イガヌを食べている様子が妙に官能的)必要性のあるものと、なくてもいいかな、っていうのもありましたが。
「染色」「イガヌの雨」「にべもなく、よるべもなく」が特に心に残りました。
長編も読んでみようと思います。



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これ、大ちゃんもらってましたよね?読んだのでしょうかね?^^
短編集は未読ですが、内容が割にインパクトがあって刺激的だったりして、タレントイメージを覆すものを持っていると感じました。 削除

2017/3/2(木) 午後 3:02 ゆきあや 返信する
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>ゆきあやさん

そう言えばそうでしたね~。大ちゃんが読む本と言えば釣りと美術関係しか思い浮かばないんですが^^;
短編集読んで、言葉に対する感覚の鋭さを感じました。普通に作家だなと思いました。長編絶対読んでみます。 削除

2017/3/2(木) 午後 8:29 ねこりん 返信する
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興味ありつつまだ未読の加藤君ですが、やっぱ面白そうですね。予想とは違う作風のようで興味を惹かれます。性描写もあるんですねぇ。驚き。 削除

2017/3/3(金) 午後 7:48 [ sinobu ] 返信する
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>sinobuさん

面白いですよ。センスがあると思います。もっと他の作品も読んでみたいと思いました。
性描写は意識して入れてるみたいですね。 削除

2017/3/4(土) 午後 8:59 ねこりん 返信する