幽談  京極夏彦

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装丁が洒落ていて、京極さんかと思ったら違う人なんですね。鶯色の和紙が最初と最後に挟まっていて、そこから第一話がもう始まり、最後の話もその和紙で終わっています。

「手首を拾う」
妻よりも拾った手首に執着する、フェティストの物語なのですが、情景描写と主人公の独白がもの寂びた雰囲気を作り出していて、嫌な感じがしないのが不思議です。

「ともだち」
仲の良かった友達でも、幽霊として見えてしまったらやっぱり怖いと思うのですが、そんなに気にしてないのがドライなような不気味なような。

「下の人」
ベッドの下に住み着いている大きな顔の人。普通だったら速攻ベッドを捨てて引っ越すはずですが、これも妙に馴染んじゃってますね。下の人の顔、自分が持ってるお餅のLINEスタンプを思い出しました(笑)ちょっとユーモラスな物語です。

「成人」
作文の作者を追うことで明らかになる、ある家に伝わる成人の儀式にまつわる恐怖を描いています。山岸凉子さんの漫画に出てくるような、家の因習の怖さですね。

「逃げよう」
自分を追ってくる謎の恐ろしいものから逃げるために、おばあちゃんの家に逃げ込みますが…。
いろいろ悪口を並べてるけど、それだけおばあちゃんの家に通ってるということは、心のどこかで慕ってるところもあったはずなんですが。最後には怖いものが入れ替わっちゃいますね。

「十万年」
人によって物の見え方や見ているものは違うということを、京極さんなりの凝った表現で語っています。

「知らないこと」
隣の家の常軌を逸した主人を観察する家族。始めは変なのは隣の主人のはずが…。
途中からどんどん別の方向へそれていって、終わりにはがらりと様相を変えるのが怖いです。

「こわいもの」
怖いものを考えては除外する独白で半分以上構成されていますが、そういう風に除外していくと、ほんと、怖いって何なの?っていう気分にさせられます。幕切れも面白いです。

怖いと感じたのは「成人」と「知らないこと」の二編です。「成人」は「どの家庭も戸棚の中に骸骨がある」ということわざを何となく思い出したし、「知らないこと」は隣人と自分、狂気と正気の区別が曖昧になるところが怖かったです。
さすが京極さん、タイプの違う物語を編み出していますね。



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文庫で読みました。「下の人」だけやたら記憶にあります。なんか、京極さんらしい「キモカワ」だったような^^; 削除

2017/9/23(土) 午後 0:19 ゆきあや 返信する
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>ゆきあやさん

「下の人」何だかもきゅもきゅしてて可愛い感じでしたよね(笑)マンガで見てみたい気も。 削除

2017/9/24(日) 午前 0:40 ねこりん 返信する