ウォッチメイカー  ジェフリー・ディーヴァー

イメージ 1

リンカーン・ライムシリーズ第7弾です。

今回の犯人は、犯行現場に月齢を表す絵のついたアンティークの時計を置いていく、「ウォッチメイカー」と呼ばれる男です。
原題は「The Cold Moon」で、こちらの方が雰囲気あるような気がするんですが。

ウォッチメイカーであるジェラルド・ダンカンは、同じ時計を10個も買っていることが判明します。つまり、全部で10人殺すつもりでいるわけです。
現場の微細証拠から、ライムとアメリアは犯人を追い詰めることができるのでしょうか?

本作がユニークなのは、読者には犯人が最初から分かっている倒叙型であること、それが読み進めるたびに二転三転し、一連の犯罪の狙いが何なのか分からなくなるところです。
また、犯人に相棒がいるところもこのシリーズでは新鮮です。

前作から登場した、新人の巡査ロナルド・プラスキーが大活躍します。
辛抱強い捜査と、時折見せるひらめきは、ライムからも称賛されるほどです。褒められて嬉しそうにする様子が可愛らしいです。
時々いらないことを言ってにらまれたり、いかにも警官口調でしゃべって注意され、それからはハッと自分で気づいて言い直すところなど、新人らしい様子も初々しいです。そういうところが魅力ですが、結婚していて子供もいて、家族をとても大切にしています。
これからも活躍してほしいお気に入りキャラです。

また、別シリーズの主役である、尋問のエキスパートのキャサリン・ダンスも登場します。被疑者の表情、身体、口調のわずかな変化から、真偽を見抜く卓抜した能力を持っています。
今野敏のSTシリーズに出てくる翠と黒崎も、超人的な聴覚と嗅覚で人間嘘発見器と呼ばれていますが、キャサリンは経験で身につけた技術と、生来の観察眼のおかげなのでしょう。
彼女の能力もあって、捜査は意外な展開を見せますが、長年ディーヴァーを読んできていると、残りページからどんでん返しの回数を予想してしまうので、ウォッチメイカーの真実については予想が当たってしまいました。犯罪の目的については分かりませんでしたが。

アメリアの、警察官だった父親が関わったある事件についてが、シリーズファンには気になるサブストーリーになっています。ライムがアメリアを思う気持ちが伝わる素敵なエピソードです。
今回はライム自身のことについてはあまり描かれなかったので、次作で何か進展があると嬉しいです。

この後、ちょっとネタバレです。















ウォッチメイカーを取り逃がしてしまうなんて!彼の頭の良さが強調されていたので、そういうこともあり得るかもとは思ったけど、まさか本当になるとは。
ライムの宿敵として、ディーヴァーのお気に入りキャラに選ばれたんでしょうか。
これから後の作品で、再登場するようです。どういう登場の仕方になるのか楽しみです。