予期せぬ結末1 ミッドナイト・ブルー ジョン・コリア

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井上雅彦さんが編纂する、新たな異色作家短篇集です。
微妙なニュアンスで終わる作品が多く、読者の読み取り方に委ねられている、という感じではないでしょうか。実際、自分の解釈で正しいのか悩んだ作品も。

第一部「犯罪と幻想」、インターミッション、第二部「恋愛と寓話」に分かれ、全16編が収録されています。
特に印象に残った作品をいくつか。

「またのお越しを」
青年が訪れた、驚くべき効き目のある薬を売る薬屋とは。
タイトルの言葉が巧いです。恋に夢中の青年も、いつかまたこの薬屋のドアを叩くことがあるのでしょうか。
これが一編目というのも、井上さんの編纂の妙を感じます。

「大いなる可能性」
放火癖のある男のあり得ない人生転換の物語です。
狙った家がことごとく放火できなくなる状況に笑ってしまいます。

「完全犯罪」
夫からチョコレートを贈られた妻が急死し、夫に疑惑の目が向けられます。
何となくこういう結末ではないかと予想していたものの、病理学者と警視総監の会話が面白すぎます。

「メアリー」
豚に芸をさせて生活している男と結婚した女性の苦難の物語です。
メアリーというのは豚の名前なのですが、それがタイトルについている時点で、豚と人間の力関係が分かる気がします。

眠れる美女
見せ物小屋で見せ物になっていた、ずっと眠り続ける美女を買い取った男のその後は。
結局、眠れる美女は、眠らせたままの方がいいってことですね。あの有名な童話とはだいぶ違いますが。

「他言無用」
長靴をはいた猫」のように、しゃべる猫を手に入れて、人生をやり直そうとしますが…。
しゃべらせるための工夫が、何でそういう方向へ行ったかなっていうくらい変です^^;

「木鼠の目は輝く」
狩猟が趣味の女性のそばにいるために、剥製のふりをした男の恋物語です。
発想が奇想すぎるんですが、かわいらしいストーリーです。

全体的に、皮肉なユーモアと、洒落た雰囲気が感じられましたが、第二部の方が、インパクトが強い作品が多かったです。
元祖「異色作家短篇集」の方のコリアはまだ読んでいないので、こちらも楽しみです。