ミステリー・アリーナ  深水黎一郎

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2016年のミステリベスト10を賑わわしたこの作品、どうやら今年の読書はこの本がラストになりそうです。(今日明日はもう諦めてる)

ミステリ研究会OBが毎年持ち回りで出題し、みんなでそれを推理するイベントのために、参加者達は鞠子の屋敷に集まりますが、その鞠子が殺されてしまいます。その前に屋敷に向かうただ一つの橋が豪雨のために崩落し、屋敷は陸の孤島に…。クローズドサークルの中で行われた殺人の犯人は?

一方、国民的人気のミステリークイズ番組「ミステリーアリーナ」、解答者がテキストを読んで、犯人を推理し、解答とその理由を発表するとブースから抜け、解答権はなくなります。解答者はミステリーヲタばかりで、テキストの裏の裏を読んで突飛な推理を繰り広げます。新しい推理が披露されると、すぐに次のテキストでそれを覆すような内容が現れるあたり、井上真偽さんの『その可能性はすでに考えた』に似ているかも知れません。

それにしても、よくまあこれだけさまざまな推理のパターンを考えたなと思います。もちろんそれぞれにちゃんと根拠がなくてはならず、中にはこじつけっぽいのもありましたが、推理として成り立っているのがすごいです。
解答者がテキストを読む形式になっているのがポイントで、それを生かした叙述トリックも何パターンも出てきて唖然としたけど、そんなやり方もあるのかと思いました。

番組の進行役の樺山桃太郎は、解答者を煽り、揶揄し、番組を盛り上げようとしますが、イラッとくる存在です。某番組のコーナー司会者の芸人を思い出しました。意外にも重要な役割を担っています。

推理パートを極限まで突き詰めたという感じで読み応えはありますが、いろいろ詰め込み過ぎって気がします。特にラスト近くに出てくるSFめいた設定はなくてもいいと思いました。

解答者が読者と同じ立場に立っているため、彼らからも何度も語られますが、ミステリとしてフェアかアンフェアかということにとことんこだわった作品だと思います。