6時間後に君は死ぬ  高野和明

イメージ 1 今度wowowでドラマがあると知って、そういえば買ってたなと思い出しました。で、読み始めてびっくり。連作短編集だったんですね。タイトル作の短さにさらにびっくりしました^^;
 他人に起きる「非日常的な出来事」を予知する(ビジョンを見る)ことができる青年圭史がどの作品にも登場します。中には名前しか出てこない作品もあるので、厳密に主人公と言っていいかは分かりませんが。
 タイトル作「6時間後に君は死ぬ」とラストの「3時間後に僕は死ぬ」がサスペンスで、他の3編は心温まる、少し切ない物語です。

「6時間後に君は死ぬ」
 美緒は、いきなり呼び止められた青年から「6時間後に君は死ぬ」と予言されます。その青年圭史とともに、自分を殺そうとしている人間をつきとめようとします。
 デッドリミットサスペンスとしてはよくあるような話で、「3時間後に…」を読むと「あれ?」と辻褄が合わなくなる感じもしました。でも、ラストの圭史のビジョンとモノローグがいいです。 

「3時間後に僕は死ぬ」
 パーティ会場での自分の死と大惨事を予知した圭史が、それを回避するために行動します。
 ドラマはこの2編を合わせて一本にして作っています。「6時間後に…」だけではあまりに短いし、盛り上がりにかけるなあと思っていたので、それで納得です。「3時間後に…」はたった3時間しかないという緊迫感や、この大惨事がどうやって起きるのかという謎解き、今まで見たビジョンが100%現実になったことから、未来を変えることができるのかという圭史の不安がリアルに描かれていて、とても良かったです。この作品は特に映像向きだと思います。ずっと同じ建物の中ではあるのですが、ビジョンのインパクトを考えると映画にしてもいいぐらいだと思いました。

 圭史のキャラクターがいいです。「ふんわりとした声」という表現で、圭史の優しく穏やかな感じを一言で表していてうまいなあと思いました。ドラマでは塚本高史さんが演じるそうです。

 他の3編では「恋をしてはいけない日」が好きです。「今度の水曜日には恋をしてはいけない」と圭史から言われた未亜ですが、運命のままに恋をしてしまいます。その結末は…。切ないけれど明るいラストが待っています。印象的でちょっとすてきな台詞があります。

 全体的に衝撃的なタイトルとはかなり違う印象を受けました。どれも、読後感がとてもいいので、おすすめの本です^^