ネクロポリス  恩田陸

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日本とイギリスの文化が融合した国、V.ファー。その中にある聖地アナザーヒルは、ヒガンと呼ばれる時期に死者が生前そのままの姿で帰ってくる場所でした。
ジュンイチロウ・イトウは文化人類学の研究のためにV.ファーにやってきたのですが、その年のヒガンは、血塗れジャックの起こした殺人事件の被害者が還ってくるのではないかと、その話題でもちきりでした。そしてジュンは事件に関わっていくことに…。

恩田さんが作り上げたV.ファーの世界に、最初はとまどい、なかなかその中に入っていくことができませんでした。それで、上巻を読み終わるのにかなり時間がかかってしまいました。
ジュンも作品の中でそういう立場でしたから、ジュンと同じ視点で読んでいったという感じですね。

イギリス的風景の中に大鳥居、紅茶と卵料理、盟神探湯や百物語、こっくりさんなどなど…よくまあこれだけイギリス文化と日本文化をユニークに合体させたものです。あまりに雑多な物事が出てくるので、パズルで合わないパーツを無理に当てはめたような気もしないでもありません^^;

鐘の合図に合わせた行動や、還ってきた死者である「お客さん」と顔を合わすためにできるだけ一人で行動し、日中は戸を開けたままでいることなど、不思議なヒガンの決まりの数々と、アナザーヒルの雰囲気は静謐なものを感じさせます。
境界線上の死を判断するというラインマンの存在は、その静謐なものの代表という感じがします。とても印象的なキャラクターです。
しかしその一方で町の人々は噂好きで物見高く、最初から血塗れジャックについての推理合戦が展開し、何か起きるたびにパブで噂の花が咲き、情報を交換するために電話をかけまくる様子には驚きます。
「死者はエンターテインメント」というマリコの言葉は場違いな気もしますが、死者に出会うことが普通のことであるV.ファーの人々にとってはそれぐらい身近なことなのだろうと思いました。

物語の中ではさまざまな謎が提示されています。
血塗れジャックは誰なのか?
ジュンの前にたびたび現れる少女サマンサの正体は?
ジュンの親戚であるケントはどこに消えたのか?
大量の血を残して消えたメアリの運命は?
他にも多くの謎があり、それを抱えたまま終盤へ…。このあたりになるとかなり物語に引き込まれているのでどんどん読み進めることができました。

しかし、サマンサとメアリを探すために過去のアナザーヒルに向かった一行を待ち受けていたのは…。
う~ん、ここで何か対決があると思っていたんですが…。こんな思いがけない大団円、これでいいんでしょうか^^;確かに謎は解明されるんですが、すごくばたばたとした感じで終わってしまった気がします。特にジャックについては納得できない点もありましたし。盛り上げるだけ盛り上げて収拾し切れていない感じが、やっぱり良くも悪くも恩田さんだなあ…とまた思った次第ですw
とてもすてきな舞台なのに、この終わり方はもったいないですね。やはり、あれだけ謎が広がったら、終盤こそもっと多くのページをさいてもらいたかったなあ…。
謎をもう少し焦点を絞って、ラストを盛り上げたら言うことなかったのにと思います。

ですが、アナザーヒルの設定と幻想的な雰囲気は一読の価値はあると思います。藤田新策さんのカバーイラストもいいです。ファンタジーの好きな方なら楽しめそうです^^





わかります!わかりますよあのラストに納得がいかない気持ち!(笑)
なんでしょうあの、ありとあらゆる仕掛けの凝らされた壮大な迷宮アトラクションに入って、いったいラストにはどんなカタストロフィが!!と大いに期待しつつ最後の暗幕をがばっと開くと、そこはいきなり出口だったみたいな(大爆) そとの光の中ぽっつ~~~んとたたずむあの気持ち。
実はいまだに納得がいっていません(笑)削除

2009/2/12(木) 午後 11:32ラブリ返信する
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これはジャンルをミックスしすぎて最後収拾つかなくなっちゃった印象が強いです。無理矢理ミステリを入れなくても良かったのではないかな、と思いましたね。ヒガンというアナザーワールドの世界観はとても面白かったのですが。そういうところが恩田さんらしいとも云えるのかもしれませんけどね。削除

2009/2/13(金) 午前 1:04べる返信する
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恩田さんのファンタジー色が強い作品ならば、ぜひ読んでみます^^いろんなモノを詰め込みすぎて原型がわからないミッスクスジュースのようなとこも恩田さんらしそうですね^^;読んだらまたきまーす。削除

2009/2/13(金) 午前 1:07チルネコ返信する
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>ラブリさん
「いきなり出口」に笑いましたw まさにその通りですね~^^;
やっぱりラストは何かしらの活劇を期待しますよね~。あんなに気合い入れて乗り込んでいったのに…あれ?みたいなw
それまでけっこう楽しませてもらったのでそれでよしとすべきなのでしょうか^^;
恩田さん、やっぱり短篇向き?w削除

2009/2/13(金) 午後 7:32ねこりん返信する
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>べるさん
設定はとてもよかったですよね~。
確かに、血塗れジャックについては整合性も?だったし、なくても良かったように思います。
サマンサとケントとラインマンの謎くらいにしておけばよかったんじゃないでしょうか。
過去のアナザーヒルの辺りをもう少し膨らませてほしかったですね。削除

2009/2/13(金) 午後 7:43ねこりん返信する
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>チルネコさん
そうですね~。かなり変わった味わいのミックスジュースだと思いますw
雰囲気はいいんですよ…。こういう雰囲気が作り出せる恩田さんはやっぱりすごいなあと思うんですが。
あとがきで恩田さんが「書いても書いても終わらない」と書いておられるように、制御不能になってしまった、というのが正直な所かも知れません^^;削除

2009/2/13(金) 午後 7:50ねこりん返信する
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はじめまして☆
私もネクロポリス読みましたが、ねこりんさんの感想と同感です!
同じ感想を抱いている方に会えてうれしいです☆
また来ます~削除

2009/2/13(金) 午後 9:36[ ユウリ ]返信する
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「良くも悪くも恩田さん」に深く頷いてしまいました(笑)。それでもいいや、個性よね、と思えてしまう私はまぎれもない恩田ファンです(笑)。この作品は記事にしてました、古い物ですがトラックバックさせて下さい♪削除

2009/2/13(金) 午後 10:22智返信する
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>ユウリさん
初めまして^^
恩田さんはよく読まれるのでしょうか?恩田さんの作品はラスト、あれ?とおもうものがよくありますよね^^;でも、まだまだ読んでない作品も多いのでこれからも読んでいきたいと思っています。削除

2009/2/14(土) 午後 1:39ねこりん返信する
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>智さん
恩田さんは長編だと、自分の中にあるものが全部投入されてしまうんでしょうね~。そして投入したらそれで満足、みたいな^^;
でもやっぱりこの設定には心惹かれるし、がっかり、という感じはしません。
他の作品もまた読もうと思っている私もやっぱり恩田ファンでしょうかw削除

2009/2/14(土) 午後 1:46ねこりん返信する
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かなり昔に読んだので細かいところは忘れてしまったのですが、日本と英国の文化の融合がとても面白かったですね。ミステリ仕立ての展開も恩田さん独特の恐怖感をあおって好きな作品です。
ただ二つの国を混ぜ合わせただけでなく、死者との不思議な心の交流や、ラインマン、教会、などドキドキさせてくれるオリジナルな雰囲気がよかったなあ。続編書いてくれないですかね^^;削除

2009/2/17(火) 午前 10:18しろねこ返信する
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>しろねこさん
そうですね~シリーズ化、私も希望します^^
そして今回消化不良なところを…解明しないんでしょうね^^;
でも、この神秘的な雰囲気は私も好きでした。削除

2009/2/17(火) 午後 7:26ねこりん返信する
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文庫のイラストを本屋さんに見に行こうと思っていたら、ねこりんさんの記事で見ることができました♪満足!ww
正直…ちょっと忘れかけてますが(^o^;
このファンタジーな感じは好きですね♪再読したいです(*^艸^)
こちらからもTBさせてくださいね♪削除

2009/2/17(火) 午後 10:23チュウ返信する
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恩田さんに「構想通りの計算されたエンディング」を期待しちゃいけませんよね(笑)。
逆に宮部さんのファンタジーは、エンディングで理屈が多くなる。
どちらも途中は素晴らしいのに・・。
この本は、新刊の時に一度は借りたのですが、読まずに返却してしまいました。そのころファンタジーに食傷気味だったんです。削除

2009/2/18(水) 午前 6:40りぼん返信する
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>チュウさん
文庫になるまでがけっこう長かったみたいですね。単行本で読まれた方はすでに忘却の彼方かもしれません^^;
ファンタジーは好きなので、この設定は楽しめました^^削除

2009/2/19(木) 午後 3:12ねこりん返信する
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>りぼんさん
昔「MAZE」を読んで「ん?」と思ってから、恩田さんの長編にはちょっと身構えています^^;
すごく読まされるから、ラストもその調子で行ってほしいんですけどね…w削除

2009/2/19(木) 午後 3:22ねこりん返信する
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この本、ようやく読みました!
ぐいぐいっと読まされましたが、確かにラストは「あれ?」って感じでしたよね。大団円は嫌いじゃないですが、何となく本作とは不向きなような・・・
でも、アナザーヒルでヒガンを過ごしてみたい!とは思いました。
トラバさせてくださいね。削除

2009/3/6(金) 午後 11:37[ とくだ ]返信する
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>プラチナさん
文庫の解説は萩尾望都さんでしたが、萩尾さんのコメディー風な大団円でしたねw
亡くなった人に会えるという設定は他の本でもありますが、この特異な世界観はなかなか良かったですね^^削除

2009/3/7(土) 午前 9:43ねこりん返信する
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確かに、初めはとっつきにくかったですね~。^^;
ガッツとか、アナザー・ヒルならではの慣習?に
英国やアイルランド、日本の風習や宗教っぽいものを感じ始めたあたりは
かなり惹きつけられて面白かったですが…。
せっかく構築した世界なんだから、ヘンに進化?させずに
閉じた世界のままで謎を解決してほしかった気がします。^^;削除

2009/3/14(土) 午後 1:21[ エンジェル ]返信する
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エンジェルさん
わあ、すみません、こんなに遅くなってしまって…><
イギリスと日本の風習がさりげなく、ではなく思いっきり派手に混ざっていたところが変わってましたね^^;最初はそれに違和感を感じましたが、そのうち慣れました(笑)
今思うとあのラストは確信犯なのかな…?とも思います^^;削除

2009/11/7(土) 午前 10:20ねこりん返信する
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彼岸の外国バージョン、楽しめました^^が、やはりラストですよねぇ。喧嘩上等、ヨロシクー!と乗り込んでいたらほのぼの幼稚園だった、いえい、この木刀、どうしてくれるんじゃい!という気分です(最近『製鉄天使』を読んだので軽く影響を受けている^^;)。それでもそこまでの過程には満足しているんですよね~。全く不思議な作品でした(褒めてるんです!多分)TBさせて下さいね♪削除

2009/11/30(月) 午後 10:31紅子返信する
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>紅子さん
製鉄天使」ってそんなノリの話なんですね(笑)「ほのぼの幼稚園」に笑いました(笑)
これからどんな大活劇が~と思っていたら肩すかしでしたね^^;
それでもファンはついてくる(私も含めて)恩田さんは偉大です^^削除

2009/12/1(火) 午前 0:15ねこりん返信する