Sweet Rain 死神の精度  監督 筧昌也

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原作からミステリー系の作品を省いて、「死神の精度」「死神と藤田」「死神対老女」の3つのパートからできてます。

まず、配役がすばらしいです。死神の千葉を演じるのに、日本人でありながら無国籍な雰囲気の漂う金城武さんはぴったりだと思います。小西真奈美さんや富司純子さんもそれぞれのイメージにとても合っていました。それに小西さんのあの歌声にはびっくり!本人が歌っているとは思いませんでした。

このあとちょっとだけネタバレありです。

家族や親しい人を次々に亡くし、「一恵」という名前にも関わらず自分には何の取り柄もないと思って過ごしていた一恵。千葉はそんな彼女の死の判定をするためにやってきます。人間界のことを知っているようで知らない千葉と一恵の微妙にずれた会話が楽しいです。他の死神が、女性には恋愛的なアプローチをしているのに、千葉にはそういう意図はなく淡々と彼女に接しているのですが、何となく彼女を助けることになったりして、ほのぼのとした雰囲気が漂います。
いつもはクールなのに音楽を聴いているときだけは子供のような表情になって、幼稚園児のように体全体でリズムをとる様子がかわいらしいです。死神がやたらにCDショップに集まっている様子は笑えましたwこの「ミュージック」大好きな死神の嗜好が彼女の運命を左右します。

「死神と藤田」はうって変わってヤクザの話です。千葉もチンピラ風に装っています(笑)今時めずらしいと言われる義理と人情を重んじる任侠路線のヤクザ藤田は、仲間から疎んじられ、罠にはめられます。それを何とかして助けようとする阿久津と、藤田を見守る千葉の温度差がユニークなパートです。

「死神対老女」では、美容院を営む老女から7歳くらいの子供の客を集めてくるように頼まれます。小学校に乗り込んだので当然不審者扱いされ、不審者注意の看板が立てられてるのがおかしいです(笑)原作では対象が小学生でなかったので、こういうエピソードはなかったですね。
なぜ老女は子供を集めたがっているのか、彼女と千葉にはどんな関わりがあるのか?がこのパートの重要なところです。

今まで仕事をするたびに雨が降り、青空を見たことがなかった千葉ですが、ラストの青空とともに爽やかに物語は締めくくられます。さわっただけで植物の生命を奪い、枯らしてしまう場面がありましたが、千葉にとって初めての太陽の光が、枯れかけたヒマワリを生き返らせるところは象徴的なシーンです。

「終末のフール」もそうでしたが、原作では「死を前にしたとしても、何か特別なことをするのではなく今できることを一生懸命する」というのが登場人物のスタンスだったように思います。この映画でも、伊坂さんの原作のそういう所が生かされていて良かったと思います^^

原作の素敵な台詞がもうちょっと出てきたらよかったな、と思います。だけど、役者さんたちの演技がいいので、この映画はお勧めです^^