容疑者Xの献身  監督 西谷弘

数学教師石神は、隣の部屋で殺人があったのを知ります。隣には弁当屋を経営している美しい女性靖子と中学生の娘が住んでいました。殺されたのは靖子にまとわりついていた元夫でした。靖子を密かに愛していた石神は、彼女を守るためにある計画を実行します。

映画を見に行くチャンスがなく、とうとうDVD発売まで待つことになりました。
最近威勢のいい役が多かった堤真一が、人付き合いもなく数学だけが趣味という、地味で暗く風采の上がらない役どころを見事に演じています。堤さんはこの役のために髪の毛をすいて、頭皮が透けて見えるようにしたそうです。それを知らずに福山さんが見て、目のやり場に困ったとか…w
ストーリーもほぼ原作通りで、ドラマのような笑いを誘う台詞も最初だけで、数式を書きまくる湯川のいつもの癖も影をひそめています。

石神がどうやって靖子の犯罪を隠蔽するのかということが焦点になっています。最初警察の目をわざと靖子に向けさせ、そこで彼女には鉄壁のアリバイがあると警察に納得させる方法を石神はとります。しかし、実際には彼女にアリバイはないのです。なぜアリバイは成立するのでしょうか…?そのための伏線は、映画の一番最初の方から出てくるので要注意です。

湯川も石神も人付き合いが苦手なのに、久しぶりに会ってお酒を飲んで笑い合ったり、証明問題を渡されて石神が一晩中それにかかり切りでその間湯川は寝てたりして…。大学時代お互いを天才として認め合ってる以上に、人間として認め合っていたのかも知れませんね。だからこそ湯川は石神の才能が犯罪に使われたことにとてもショックを受けたのだと思います。

石神のアリバイ工作が、石神と靖子だけに関わるものならば、もしかしたら湯川は別の方法をとったかも知れません。ですが、湯川は真実を靖子に告げるしかありませんでした。
警察署に現れた靖子が罪を償う、と言った時の石神の慟哭!それまでほとんど感情を表に出すことがなかった彼が…。自分の人生をなげうってまで彼女を助けようとした石神の思いの全てがこの慟哭に込められています。この堤さんの演技、涙無しでは見られません;;
たびたび出てくる「四色問題」ですが、「隣同士が同じ色になってはいけない」というのは石神と靖子の関係の象徴でもあるように思います。負の色は全部自分が背負い、靖子が他の人と幸せになるのを願う…ほんとになんという献身でしょう。

映画には原作にない雪山に登るシーンがあります。湯川が雪の斜面を転がり落ちるシーンは福山さんが自分で演じたそうです。
「今登らないと、二度と登ることはないだろうから」という石海の言葉に彼の決意が表れています。
でも、特にないといけないシーンではなかったようにも思います^^;

原作ファンの方はほとんど見ておられるでしょうが、もし未見ならこれは必見の映画だと思います^^あ~原作も読み直したくなってきました。