幻獣ムベンベを追え  高野秀行

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早稲田大学探検部が、コンゴのテレ湖にいるという幻の怪獣モケーレ・ムベンベを探す探検記です。

私が通っていた大学にも似たような部があり、普段は地元の有名な鍾乳洞の探索がメイン活動です。在学中は全く関わりのなかった部なので他にどういう活動をしているか知らなかったのですが、サイトを見ると、時には他の大学と合同で、海外の洞窟の探検にも行っているようです。その中には、早稲田大学探検部の名前もありました。

探検、冒険ものが大好きなのですが、この本を読むと、探検というのはやはり物見遊山気分ではできないのだなあと感じます。
コンゴは日本と国交がなく、資料を集めるのも一苦労です。作者であり探検隊のリーダーである高野さんは、まず公用語であるフランス語を覚えることから始めました。さらに、現地語であるリンガラ語も。メンバーの中で言葉が話せる人がいないと話にならないからです。さらに、機材を揃えるためにメーカーと交渉したり、コンゴで調査活動をするために各省に許可願いを出したり…。出発までに越えなければならないハードルがいくつもあり、それだけでぐったりしそうな感じです。

何ヶ月もかけて準備を整えてコンゴに入国したのはいいけれど、今度はテレ湖周辺を治めるボア村の酋長との延々と続く折衝…。それが終わった次の日は、ポーターへの荷物分担で一悶着。
テレ湖への道のりでは、ももの付け根まで泥につかる泥沼地獄をくぐり抜け、ようやく湖に到着します。苦労の連続なのですが、テレ湖についた時の感動はそれをすべて吹っ飛ばしてしまったようです。

24時間態勢で湖を監視する毎日に、始終蚊や蝿に悩まされ、マラリアの蔓延や虫さされあとの化膿、そして最も重要な食料の不足など、現地に着いてからも数々の苦難に見舞われます。隊員の中には、テレ湖にいる間ずっとマラリアのために寝込み、活動ができなかった人もいたほどです。
でも、それらのことすべてに上回るのが、絶対にムベンベを見つける、またはムベンベの正体を見極めるという意欲なのです。
それに、やはり若さゆえでしょうか、深刻になりすぎず、大変な状況でも明るくさばさばと乗り越えて行っているように見えます。とにかく前向きなんですよね。

わがままな子どものようだけれど憎めないアニャーニャ博士や、優しく話し好きのヴィクトールなど、現地の人達との交流も心温まる感じがします。

また、ゴリラや巨大なチンパンジー、ワニやカワウソとの遭遇も、動物好きとしてはわくわくしました。でも、すべてイコール食料、なんですけどね。

探検には、とにかく体力と根性、生活力そして頭脳が必須だということが分かりました。とことん好きでないとできないことですよね。これほどの体験をしても、そのままアフリカ放浪の旅に出てしまうメンバーや、すぐさまロッククライミングの武者修行に出てしまう人も。やはりそういう人達だからこそ、やれたのだなあと思います。
私は本の中だけで楽しむことにします^^;