痙攣的~モンド氏の逆説~  鳥飼否宇

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九大理学部生物学科卒で、昆虫が探偵役をつとめる作品などで知られる作家さんです。「密林」も昆虫関係なので、その方面の研究をされていたのかも。

「痙攣的」は、芸術をモチーフにした連作短編集です。ロック、現代アートイリュージョニストなどが取り上げられています。帯には「本格」が炸裂する!とありましたが、ほんとに本格なんでしょうか…w

最初の「廃墟と青空」は、ロックバンドのデビュー公演で、メンバー全員が姿を消し、ステージ上にプロデューサーの死体が残されていた事件です。
バンド名「鉄拳」で、どうしても白塗りのあの人しか思い浮かばなかった私…^^;
それはともかく、これは正統派のミステリでした。ステージ上のメンバーの位置についてのトリックは、バンドに興味のある人ならなるほど~と思うところだと思います。私はそういうのに疎いので、一生懸命考えて「ああ、そうなのか~」という感じでしたが^^;

「闇の舞踏会」は前衛芸術についての話です。山海塾のような舞踏や、生き物を殺してみせるような過激なパフォーマンス、二進法で世界を記述しようとする試みなど、???となるような芸術家でいっぱいです。残された「○×」というダイイングメッセージに、それぞれの芸術面からアプローチするのがユニークです。
ラスト、えええ、どういう意味?と思うのですが、その疑問を抱えつつ次の作品へ…。

「神の鞭」は雷を使ったイリュージョンアートについてです。天候を利用した大がかりなトリックが使われています。で、やっぱりラストに「?」

ここまではまあ、普通のミステリの範疇に入れてもOKでしょう。だけど、「電子美学」「人間解体」で一気に「バカミス」の世界へ… なんだかもう、積み上げた物がどんがらがっしゃんと崩れるような衝撃です^^;
これについては何も語れないというか、語りたくないというかw
でも、前の話で「?」と思っていた部分がここで納得できてしまうのがなんかくやしいですw
最後にやっぱ生物関係で終わっているところが鳥飼さんらしさですか…。

プレステージ」という奇術師の映画がありますが(原作もあるけど未読です)、これもトリックがトンデモ映画でした。おもしろかったですけど。イリュージョンとトンデモという共通点で、何だかこの映画を思い出してしまいました。雰囲気は違うんですけど。

まさに「痙攣的」な作品です^^;