花と流れ星  道尾秀介

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真備シリーズ短編集です。シリーズ作品一気読みもいよいよ最後に。道尾さんの作品もこれでコンプリートです^^
霊現象探求所を開いている真備庄介と、友人のホラー作家道尾、真備の助手凜の三人が関わった事件や出来事をめぐる物語です。
今回も霊現象の探求、つまりホラー路線からは離れ、三人や、彼らと関わる人々の内面を描いたものになっています。今までの作品よりも繊細な筆致が印象的です。

「流れ星のつくり方」
「七つの死者の囁き」で既読です。凜は、友人の両親を殺した犯人を見つけたいと話す少年と出会います。改めてこの作品のうまさに感心しました。題名からしてすでにミスリードですよね。「星の王子さま」のエピソードもいい雰囲気を醸し出しています。

「モルグ街の奇術」
真備は、右腕の手首から先がない男に、手首を消したトリックを当てる賭けを申し込まれます。賭けの代償に勝手に道尾の手首も入れちゃってるところが笑えます^^;
モルグ街、ということから○○が関係してそうだな~とは思いましたが、そんな気味の悪い話とは…。最後に真備が「偶然であってほしい」と言いますが、そのあり得ない話の方がまだ救いがある気がするんですが…。

「オディ&デコ」
拾った子猫を殺してしまったと話す少女が見せた写真には、白い猫の顔が浮かんでいました。猫の呪いなのでしょうか?
少女の複雑な心情を中心にした内容ですが、発想が面白いし、読後感も良い作品です。
道尾はあんなに凜のことを気に入っているのに、凜からはそういう扱いだったんですね^^;少しは見直してもらえたんだかどうだか…(笑)鼻がつまった真備がかわいらしいですが、けっこうそれ重要だったんですね~。

「箱の中の隼」
新興宗教の本部に真備として乗り込む羽目になった道尾は、そこで苦しむ少女や異様な風体の老人を目にします。そこで起きた騒ぎに巻き込まれてしまうのですが…。
道尾の立ち位置はこの作品で定まってる気がします。いいように使われている感じ^^;仏像もなかには笑いました。これを持ってくる道尾のセンスって^^;
真備の言うとおりまさに白づくし。うまくまとまりましたね(笑)

「花と氷」
不慮の事故で孫を亡くした老人は、自分の家でお楽しみ会を開くという知らせの紙を子ども達に配ります。その意図は…
亡くなった妻(凜の姉)を思い続ける真備と、唐突に失われた二人の幸せに痛みを抱える凜、そして老人と、それぞれの失った人への思いが丁寧に描かれています。
ラスト近く、花と氷についての文章が美しく、心に残りました。

それぞれのキャラクターの肉付けがしっかりとしてきて、かなり感情移入して読むことができました。これからのこのシリーズが楽しみです。次の真備長編は、また霊現象を探求してほしいと思います。