化身  宮ノ川顕

イメージ 1

第16回ホラー大賞受賞作です。最近ブロガーさん達の記事で話題のこの作品、ちょうどよく図書館で見つけたので借りてきました。
表紙が、全身花に覆われた犬なのですが、花と犬というかわいい物同士の組み合わせなのに何でこんなに不気味なのでしょう…。

「化身」
ジャングルで池に落ちた男は、はい上がれないままそこで生きるすべを模索することに。
サバイバル、生き物系、思いっきり私好みの作品です^^はじめは食料を調達することに必死になっていた男が、水に順応した体を得たことにより、池での生活を楽しむようになってきたところがユニークです。果実酒作りに熱中するところなど、安部公房の「砂の女」で、同様に穴から出られない男が水を蒸溜する装置作りに夢中になる様子を思い出しました。
変化していく体に○が一役買っていることや、脱出を試みるときに、偶然落ちて来た○を利用することなど、自然をうまく取り入れているところがいいですね。
ラストの展開はもうびっくり!ホラー大賞に応募した時の題だと、展開を予想できる人もいるかも知れないので、変更したことは効果的だったと思います。いきなり終わっちゃったので、まだまだ続き読みたかったです。

雷魚
6年生の康夫は釣りに熱中する少年です。いつも釣りに行く池で、雷魚の姿を見かけて連日通ううちに、そこで見慣れぬ女性に出会います。
口裂け女の話、雷魚を絡めて、少年のひと夏の淡い恋心を描いた作品です。展開はだいたい予想はつくのですが、とても情景描写のうまい作家さんだと感じました。釣りや祭りの様子、夏らしい自然の風景など、色彩が目に浮かぶような、はっとさせる表現がありました。

「幸せという名のインコ」
娘の希望で飼うことになったオカメインコのハッピーは家族の人気者になります。その一方でデザイン事務所の経営が悪化し、一家は追い詰められていきます。そんな時、インコが話した言葉は…。
経済的に困窮していく様子が詳細に書かれていてリアルです。夫がインコのお告げにのめり込み、性格が変わったようになっていく様子が怖いです。インコは娘に一番なついているので、娘にとって一番良い方法を考えていたのかも知れません。それが最後のお告げの意味だとしたら皮肉ですね。

二作目はあっさりとした読み心地でしたが、一作目と三作目はインパクトがありました。自然や生き物について関心がある方だとお見受けしたので、これからの作品が楽しみな作家さんになりました。