蝦蟇倉市事件1(アンソロジー)

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11人の作家さんたちがみんなで架空の街蝦蟇倉を舞台に作り上げた競作アンソロジーです。今回はそのうち5編が載っています。
街の基本設定は道尾さんが考えたそうで、それを元にイメージが各作品で広げられています。この街では毎年平均約15件もの不可能犯罪が起きます。それが伊坂さんの作品から不可能犯罪係に発展し、その設定をまた他の人が生かしています。リレー小説のような感じで楽しいです^^道尾さんの話を伊坂さんが読んでつなげるなんて~それだけでワクワクします♪

「弓投げの崖を見てはいけない」 道尾秀介
これはネタバレ書きたいと思うので、一番最後に回します。

「浜田青年ホントスカ」 伊坂幸太郎
「本当っすか?」が口癖の家出青年浜田は、蝦蟇倉のスーパーで相談屋の手伝いをすることになります。相談屋の稲垣は、かなり危ない相談にも平気で乗ってしまう変わった男でした。
軽いノリなのですが、後半びっくりする展開に。ラストは不条理テイストで終わります。浜田青年役は濱田岳さんしかないでしょう!道尾さんの作品で「ちょっと無理かも…」と思ったところをフォローしているのがさすがです^^

「不可能犯罪係自身の事件」 大山誠一郞
さまざまな不可能犯罪を解決し、不可能犯罪係のシンボルともなっている真知博士のところに、十年前の犯罪を解決して欲しいという依頼が。依頼者の男と話している間に急に眠気が差した博士が目を覚ますと、男は殺されていました。
十年前の犯罪は、基本は古典的パターンなのですが、現在の犯罪の動機がとっても変わってました。トリックはいくつか無理な点があるのをさらっと流してましたね^^;

「大黒天」 福田栄一
和菓子屋にある木彫りの大黒天は、骨董的価値はないものの、祖父夫婦が大切にしていたものでした。しかし、それが祖父に盗まれた物だと言ってきた男に、結局渡してしまうことになります。孫の靖美と輝之は、亡くなった祖父の疑いを晴らすために調査を開始します。
特にひねったところのない作品で、大黒天の謎も分かりやすいです。靖美の仕事についてはちょっとびっくりしました。

「Gカップ・フェイント」 伯方雪日
今までに出てきた作品とがらりと雰囲気が違い、蝦蟇倉に世界各地から格闘技のスペシャリスト達が集まり、大会が開かれる話です。その大会の名前が「Gカップ」なんですね。そんな中、市長をモデルにした仏像と台座の間に挟まれた死体が発見されます。
格闘技という舞台にふさわしい大技トリックが笑わせてくれます(笑)バカミスなんだけど、妙に納得できる作品です。

「弓投げの崖を見てはいけない」 道尾秀介
名前のせいか自殺の名所となってしまった弓投げの崖。そのそばを通るときは崖を見ないようにという言い伝えを思い出しながら車で走っていた邦夫は、急に動き出した駐車車両を避けようとして事故を起こしてしまいます。そして恐ろしい出来事が…。
また見事に騙されました^^;叙述トリックが冴え渡ってますね~。とにかく巧いの一言です。
最後の執筆者のコメントで、ラストの出来事について一人に絞れるというのを読みました。
それで読み直したのですが深夜の寝ぼけた頭ではどうにも分からず、どこかにヒントないかな~と道尾さんがヒント出してるにも関わらず、とりあえず道尾さんのブログに行ってみたところ、何と驚くべき事が書いてありました。p69の「七時二十五分」は、正しくは「六時五十八分」の誤植だそうです。この誤植は初版のみで、あとは訂正されているそうです。変だと思いましたよ~だって、あまりにも露骨に三人のうちの一人が除外されるんですから。
そこで考えるのを諦めてとりあえず寝ました^^;そして次の日、はっきりした頭でもう一度道尾さんのヒントを元に考えてみました。自分なりの結論出してみたので書いてみます。超ネタバレですので未読の方はご遠慮下さい。

















まずラストの事故が、弓子の部屋の真下で起こったということが重要です。弓子の部屋は二階の廊下を歩いた一番奥にあります。外階段は部屋の反対側の端についています。そのため、部屋から降りて行った邦夫は部屋の真下を通る必要がありません。邦夫がめざしていたのはトンネルの方だからです。また、裸足で部屋を出た邦夫の足音が響くこともないでしょう。
次に囃子台の動く方向は、商店街を南から北でした。森野雅也は囃子台を追い越すように通ったので商店街を北へ向かっています。北からゆかり荘に行く場合は外階段に行くのに弓子の部屋の下は通りません。
ということは、囃子台と逆方向に動いて、南側からゆかり荘に向かった隈島が該当者ということになります。でも…あとの話で元気に出てくるんですよね^^;
私の解釈が間違ってるのか、それとも事故にはあったけど大した怪我じゃなくて元気に復帰しているのかよく分かりません^^;読まれた皆さんのご意見をお聞きしたいです。





















やはり一番は道尾さんの作品、次は伊坂さん、その次は伯方さんのが面白かったです^^
次の「蝦蟇倉市事件2」では北山さんと米澤さんの作品があるので楽しみです^^