造花の蜜  連城三紀彦

イメージ 1

歯科医である夫と別れて暮らしている香奈子の息子圭太が誘拐されます。連れ去られた幼稚園に向かうと、職員から確かに香奈子自身が迎えに来たと意外な返事が。そのうえ最初は犯人からの身代金の請求はなく、何が目的か分からないまま事件は進みます。

初連城さんで、苦手な誘拐物です。
最初は普通かな、と思っていたのですが、ハチ公前の交差点の真ん中を身代金の受け渡し場所にしたり、蜂を使ったり(あ、もしかしてハチ公も蜂とかけてあるんでしょうか^^;「罪と罰」で蜜蜂、ってシャレもあったし…)犯人の意図が分かりません。
しかしそのうち、この誘拐の陰に犯人の驚くべき計画が隠されていることが分かってきます。

中盤は、女王蜂とも称される女性に翻弄され、誘拐に関わることになった男性の心情が描かれます。私は実はこのパートは苦手でした^^;こういう男女の愛憎みたいなどろどろした話がダメなんです。危ないと分かっているのに、女性に惹きつけられ、犯罪に手を貸そうという気持ちになることが理解できなかったです。男性が家庭的に恵まれなかったことも関係あるんでしょうけど…。それに、彼女に惹きつけられる蜂たちが他にもうようよ^^;全く困ったものです。

事件はあれも怪しいこれも怪しいとずいぶんいろんな仮説が出てきます。、それも最初は仮説って感じがしなくて、もうそういう頭で読んでると、やっぱり違いました、あれ?って感じです^^;
誘拐の意図も、ああ、そういう狙いがあったんだな~と思っていると、実はそれはダミーで、ええっ、何それ…  まさに二転三転、展開が全く読めません。

最後に出てくる二つめの誘拐事件も驚く展開ですが、これってない方がすっきりしたかもです。ただでさえ500ページ近くもあって長いし、いろんなことがありすぎて読み疲れするので…。
犯人についても、手口こそはっきりするものの犯人自体については謎が多く、そこがいまいちでした。

あまり好きな話ではなかったけれど、誘拐物としてはかなり斬新な作品ではないでしょうか。誘拐物がお好きな方は一度手にとってみるといいかもです。