DINER  平山夢明

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危ない儲け仕事に手を貸したオオバカナコは、殺し屋に捕まって殺されそうになりますが、間一髪助かって、殺し屋専門のダイナー(定食屋)「キャンティーン」で働くことになります。
 
舞台は東京なのですが、雰囲気はどう見てもアメリカです。暗黒街での抗争の舞台としてもアメリカがふさわしいように思うのですが、どうして日本にしたのかという気がします。でも「シンジュク」と片仮名で出てくるし、似て非なる世界なのでしょう。
 
とにかく最初から最後まで血と暴力と銃弾の世界です。寒気のする拷問シーンを始め残酷描写は多いのですが、無意味な残酷さではなく、この狂気じみた世界を表すのに必要だったのだと思いました。
 
カナコはダイナーでは取るに足らない者として何度も殺されそうになりますが、智恵を働かせ、生き残るすべを身につけていきます。
ダイナーの主人ボンベロが魅力的なキャラクターでした。最初は冷酷さしか見せませんでしたが、だんだんとカナコに心を許し、人間的な横顔を垣間見せるようになります。
そして何といってもボンベロの作るバーガー。極上の材料ばかりを使って作られたそれは、もはや芸術品の域に達しています。表紙のバーガーの迫力も相まって、食べたくなること間違いなしです。
出てくる殺し屋たちも、全身傷だらけの「スキン」や、小さく見えても残虐そのものの「キッド」など印象的な人間ばかりです。彼らは生まれた時からこうならざるを得なかった哀しい運命を背負っています。精神的にも追い詰められ、殺し屋をやることで、かろうじて自分を保っているのかもしれません。でもカナコは不思議に殺し屋たちの心を和ませるものをもっているようです。
 
ボンベロの相棒、ブルドッグの菊千代が最高^^敵を一撃で仕留める恐ろしい猛犬ですが、忠義心にあふれ、時折見せる仕草にも憎めないものが…^^;肉より苺が好きというところも面白いです^^カナコの危機を何度も救ってくれます。
 
ボンベロもカナコも何か人に言えない過去を持っていそうだと思っていましたが、それが明らかになる驚きの展開も。
ラストの熾烈な銃撃戦の中で心を通じ合わせる二人のシーンには泣けます;;
 
評判通り、これは極上のエンターテイメントでした^^描写にめげず、最後まで読んでみてほしい作品です。