死ねばいいのに  京極夏彦

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ケンヤは、たった4回だけ会ったという亡くなったアサミのことを、彼女の関係者に聞き回ります。なぜケンヤは彼女のことを知りたいのか、ケンヤが相手にぶつける「死ねばいいのに」という言葉の真意は?

ひさびさに読んだ京極さんです。妖怪シリーズもずいぶん前から放り出してますが、いつか戻りたいと思っています。
さてこの作品ですが、一番読むのがしんどかったのが第一章にあたる「一人目」です。ケンヤの今どきの若者風のだらしないしゃべり方と、ケンヤが会った男性の自己中なウダウダした言い訳とモノローグ、すべてにイライラさせられました。ケンヤが相手の言葉の端々にいちいち引っかかるのも気になりました。京極さんらしい、微に入り細を穿った心理描写に一気に嫌な気分に…。「二人目」では、相手の部屋に入るかどうかという些末な出来事に三ページ^^;宮部さんの「理由」で、事件にそれほど関係ない人物の生活まで細々と書かれていて、やや辟易したのを思い出しました。そうする意図は分かるんですが…。

そういうわけで、二章目にして挫折しかかった私ですが、がんばって読み続けた三章目で、「お?」と思いました。ケンヤと話すことで、相手が自分の気持ちを見つめ直しながら素直になって行く様子に好感が持てたからです。ケンヤは自分のことを頭悪いしいい加減だと言っていますが、相手の言質を取って鋭く突いていく辺り、バカではできないなと思います。そしてだんだんとこの物語に入り込み、ケンヤが次に相手とどんな話をするのか気になり始めました。「死ねばいいのに」という言葉をなぜどの相手にも繰り返すのか、その謎にも惹きつけられました。

五章の終わりから、驚くべき展開が待っています。よく考えたらそれしかないでしょうに、全然気づいていませんでした…^^;犯人の動機も普通なら信じられないようなものなのですが、この犯人ならそれもあり得るかも…と思わされます。

アサミはほんとに幸せだったのでしょうか。他人から見れば、不幸でしかない人生のように見えますが、そんな中で、自分なりに幸せだと思う瞬間を見つけていたのかも知れません。でも、彼女の最期の言葉は、本当の幸せを知らない、刹那的にしか生きていない人の言葉だったように思います。その背後にあるものを深く考えず、彼女を手にかけてしまった犯人…。その後の行動もだからこそだったのだなあと納得させられました。

読み終わってみれば、さすが京極さん、という内容でした。題名通り、というか、字面以上に深い意味のこもった重い内容だったと思いました。でもこれをiPadで読むって…^^;京極さんファンの人ならいいでしょうが、興味本位で買ってみた人は内容の重さにiPadを取り落として壊したんじゃないかと心配になります^^;



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なぜ日本初のiPad小説の第一弾にこの作品が選ばれたのか不思議ですよねぇ。京極さんもひとが悪いというか(苦笑)。犯人は確かにその人物しか有り得ないんだろうけれど、その人物の言動から全然思い至らなかったので驚かされました。ケンヤから突きつけられる『死ねばいいのに』の一言に毎回自分が突き落とされた気分になりました・・・。なぜかこの作品の記事は送受どちらのTBも反映されず申し訳ありません。京極さんが結界でも張ってるんでしょうか(苦笑)。 削除

2010/9/16(木) 午前 8:25 べる 返信する
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>べるさん
べるさんが書かれてたように、タイトルがTB不可に引っかかってるのかもですね。または京極さんの結界(笑)
iPadにはほんとミスマッチな作品ですよね。でも、京極さんはそこを狙ってたのかも…^^; 削除

2010/9/17(金) 午前 0:39 ねこりん 返信する
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記事みっけ^^。ほんとだ、京極さんの記事はこれだけですね。そうそう、ipadで読めるんですよね。。読みやすいっちゃー読みやすいけど。。^^;その割に凄い人生について詰まった内容で、身につまされそうになりました。真相にも驚いたし。 削除

2014/4/23(水) 午前 11:26 ゆきあや 返信する
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>ゆきあやさん

やっぱり京極さんは一筋縄では行かないな、と思わされました。タイトルのインパクト、内容の重さ、堪能しました^^;
何だか最近、大作になかなか手が伸びなくなってるんですよ^^;ほんとは妖怪シリーズも読みたいんですが、蘊蓄のところで寝てしまいそうでコワイです(笑) 削除

2014/4/26(土) 午後 9:43 ねこりん 返信する