10ドルだって大金だ  ジャック・リッチー

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「クライム・マシン」で短編小説の面白さを大いに感じさせてくれたリッチーの短編集第二弾です。ノンシリーズが八編、「クライム・マシン」の文庫版では割愛されていたカーデュラシリーズが一編、ターンバックルシリーズが五編載っています。印象に残った作品の感想を。

「妻を殺さば」
冷酷に妻の殺人計画を練っていた男の思わぬ誤算は…?
失敗しそうだとは思ってたんですが、まさかこういう展開になるとは。彼女に求婚していた男の意外な素顔にも驚きました。

「毒薬で遊ぼう」
ある家の庭に投げ込まれた青酸カリの丸薬を探すことになった刑事達は、それを隠してしまった子供達に翻弄されることに。
悪魔のような子供達にイライラさせられますが、それをかばう母親の親バカぶりにも呆れます。

「10ドルだって大金だ」
銀行の残高が十ドル超過している事態に、次々と「十ドルを入れたのは自分だ」と申し出る人物たちが現れます。
シチュエーションの面白さと、思わずツッコミを入れたくなるラスト一行が秀逸です。

「とっておきの場所」
妻を殺した男はどこに死体を隠したのでしょうか?
普通そんな所は探さないですよね^^;警察に庭を荒らされることを一番心配している犯人がちょっとズレてます^^;

「キッド・カーデュラ」
カーデュラが探偵になる前の出来事だそうです。貴族で○○○なのに貧乏で、他にも儲ける手段がありそうなのになぜかボクサーになってるところが笑えます(笑)カーデュラの素性を生かしたオチがいいですね^^

最後の五編がターンバックルシリーズです。読んであれ…?私立探偵?前は部長刑事だったはず…と思いましたが、論文を書くために出向してるらしいです。上司から快く「2,3年休暇をとってもいいぞ」と言われてるあたり、署内での扱いがしのばれます(笑)ターンバックルは情報収集力に長け、推理力もあるのですが、なぜか最後には彼の推理とは全く違う結果が待っています。そして彼を慰めるのは相棒のラルフと一杯のシェリー酒…とぼけた味のユニークなキャラクターです。

「クライム・マシン」の方がスマートでキレがあったと思いますが、こちらもなかなか楽しめました。特にカーデュラは他の作品をもっと読みたい気分にさせられました。「カーデュラ探偵社」もキープしてるので楽しみです。