プリンセス・トヨトミ  万城目学

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国の補助金が適正に使われているかを調査する「会計検査院」の松平元、旭・ゲーンズブール、鳥居忠の3人は、大阪市の「社団法人OJO」の調査を行うことになります。一方で大阪に住む真田大輔は性同一性障害の中学生で、セーラー服で登校したために上級生から目をつけられいじめられます。小さい時から彼を守ってきた幼なじみの橋場茶子は復讐を企てることに。並行して語られる2つのストーリーが、大阪を網羅するある組織の存在を介して結びつけられていきます。

登場人物が歴史上の人物からすべて名前を取っています。徳川と豊臣の対立の図式を、名字を使って表しています。プリンセスの名字だけが漢字が変えられているのも、代々秘密裏に守られてきた身柄を表しているのでしょう。
歴史の中で隠されてきた大阪国と豊臣家の末裔の存在、という設定は面白かったです。他県人からの見方ですが、大阪って確かに仲間意識が強いというか、郷土愛も並外れて強いような気がします。大阪府民の多くが共通の秘密を固く守ってきているという設定は無理も感じますが、大阪ならあり得るかも…と読者に思わせてしまうところもあります。
ただ、とても大がかりな設定なのにも関わらず、思ったより大きな事件が起きなかったなあと思います。確かにシグナルを見て大阪府民が続々と大阪城に集まるシーンは府民の結束を感じさせる読み応えのあるシーンでしたが、結局トップ同士の会談で全てが決まり、集まった人達の出番や、肝心のプリンセスの活躍もほとんどなかったのが残念です。プリンセスは何も知らずに周りの人々によってただ守られる存在、ということを強調したかったのでしょうか。
長いトンネルを歩く時に父親から子に伝えられる秘密、その時間を通して強まる親子の絆にはなるほどと思わされましたが、子供が女の子ばかりだった時には、その家での継承は途絶えてしまうってことなのでしょうか?でも、実は女性も…だったので、また新たにどこかからスタートしてるのかもですね。

会計検査院の3人はキャラが立ってました。「鬼の松平」と言われながらアイス大好きな松平は、堤真一さんがぴったりだなと思いました。旭と鳥居は何と映画では男女入れ替えだったのですね。綾瀬さんは旭とイメージ違うなあ…とは思っていたのですが^^;確かにハーフで長身な美形キャラは岡田将生君ならぴったりです。でも、ここで男女を入れ替えてしまうと、ラストの旭と大輔の会話が生きないのでは?と思っていたのですが、映画では男性だけでなく女性もこの秘密を公に知っていた設定になっているのですね。原作のように、実は女性もひそかに…の方が良かったとは思いますが。そうなると、大輔に「女性として生きていくのも大変だ」と声をかけるのは鳥居の役目になるのでしょうか?旭が言ってこそ意味のある台詞のように感じるのですが…。重要なシーンなだけに、このあたりがどのように映画化されているのか気になります。