PK 伊坂幸太郎

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未来の改変に関わる3つの短編が収録されています。
「PK」と「超人」は最初からセットで執筆されたそうですが、「密使」だけはあとで先の二編につながるように改稿されたものだそうです。
「密使」は、SFアンソロジーの「NOVA5」のための書き下ろしなので、最初からSFとして書かれています。

伊坂さんらしく、3つの物語の中で時間を前後して様々なエピソードがリンクしていくストーリーには目を瞠らされます。もっとじっくり読めば、私が見つけた以上のリンクがあるのかもしれないと思いました。


このあと少しネタバレあります。












伊坂さんのインタビューが載っていた「IN☆POCKET」を読みましたが、それによると、一番メインになったアイディアは赤ちゃんが落下する事件だそうです。
確かにこのエピソードが、試合の大事な局面でのPKの成功を左右し、「超人」に出てくる超能力者の人生にも関わってきます。

「PK」と「超人」は確かにリンクしているのですが、最初二作を続けて読んだ時、各編が独立しているように感じられました。
でも、「密使」を読んで、ああ、そういうことなのかなと思いました。付け加えられたこの物語が、大きなストーリーの流れを形作る効果を持っているのですね。

「密使」で、この世界が未来に恐ろしい災厄に遭うことが分かります。災厄を防ぐために2つのプロジェクトが別個に活動します。一方は過去に密使を送り込むことで災厄を防ごうとし、一方は密使を別の方法で役立てることで防ごうとします。
「PK」で描かれている世界に、その密使は送り込まれているので、こちらをA′とすると、これは想像ですが「超人」は送り込まれなかった世界、A″を表しているのでしょうか?世界の分岐について言及された「密使」から考えると、そういう解釈もできるかなと思いました。

印象的な言葉がいくつかありました。
「何をしても、大きな影響がないんだったら、子供たちに自慢できるほうを選べばいいんだから」
自分のお子さんに対してもそういう思いをもって行動していらっしゃるのでしょうね。
軽く衝撃を受けました。
そう言えば、心配性の作家は、「仙台ぐらし」で読んだ伊坂さん自身を投影していますね。

「臆病は伝染する。そして勇気も伝染する」
震災前に書かれた物語ですが、今の日本にも必要な言葉のような気がしました。

リーダビリティをあえて落としたということですが、読み終わった後には、不思議な力強さを感じます。
「未来は素晴らしい」と子供に伝えることを選んだ登場人物のように、未来への希望をもたせるラストになっていると思いました。



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世界の未来を担う『密使』の正体がアレっていうところが、伊坂さんらしいなぁ、と思いました(苦笑)。個人的にはあんな奴には担って欲しくないですけど^^;;

リンクがすっきりわかるともっと楽しめたのかもしれないなーと思いました。さらっと読んでしまうとちょっと掴み所のない作品って印象になっちゃうかもしれないですね(初読の私がそうだった^^;)。 削除

2012/4/28(土) 午前 0:41 べる 返信する
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>べるさん

ですよね~^^;
何でアレにしたんでしょうね^^;

今回わざとリンクを複雑にしてる感じがしました。
インタビューでも「『なかなか読み進まないけど面白い』っていうのが好き」っておっしゃってましたし(笑) 削除

2012/4/29(日) 午前 1:20 ねこりん 返信する
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ホント…密使が、まさかのアイツだったなんて><
恐ろしいけどむやみに殺せないかも?なんて思ってしまいますよね。
(いや…遭遇したら薬をぶっかけますけど(;^_^A )
TBさせてくださいね^^ 削除

2012/6/2(土) 午後 10:07 チュウ 返信する
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>チュウさん

密使をアレにするところが伊坂さんの遊び心ですね♪
うちに出るアレは密使じゃないと思うんで思いっきり薬かけます(笑) 削除

2012/6/3(日) 午後 0:53 ねこりん 返信する
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リーダビリティをあえて落とした!?なるほど、そういうことだったんですか。難しくて、読んで数日経過した今、またわからなくなっております^^; 削除

2014/11/26(水) 午後 7:21 ゆきあや 返信する
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>ゆきあやさん

パラレルワールドとすると、だいたい説明つくのですが、分かりにくい書き方がされてますよね~。
今、新作を読んでますが、こちらは分かりやすいです^^ 削除

2014/11/26(水) 午後 8:51 ねこりん 返信する