プラチナデータ  監督 大友啓史

28日、Tジョイ博多であった舞台挨拶つきの上映に行ってきました。
ニノの挨拶についての記事はこちらをどうぞ。

完全ネタバレになりますので、映画&原作はこれからという方はご注意下さい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

原作と映画はかなり違うところがあったので、その違いにふれながら感想を書きたいと思います。

まずプラチナデータという名前ですが、原作では神楽はその存在を知らず、「プラチナデータとは何か?」を追求する内容になってます。でも映画ではプラチナデータは、DNAプロファイリングのためのDNAデータを指す言葉になってて、VIPを見逃すための秘密のプログラムは「真のプラチナデータ」と呼ばれてました。
東野さんとしては「プラチナ」という言葉で、データに特別な意味合いを持たせたかったはずですが…。でも変更したおかげで、ニノのあのインパクトあるウィスパーボイスが生まれたわけですから、結局は良かったのかも^^;

神楽のもう1つの人格リュウが描いていた手の絵。あれは父親の手でした。
原作ではコンピュータの作った陶芸作品を見分けられなかったことで父親は自殺します。(映画では神楽の言葉が引き金でしたが)父親の死でシニカルになり、DNAを登録するような管理社会で人間本来の良さを見失っていた神楽が、「作品(データ)よりも、それを生み出した人間こそが貴重」だと気づくところ、これが原作のテーマなのではないでしょうか。
映画では父親やリュウの絵のエピソードは中途半端に終わってしまっていたように思います。
実は神楽の方がサブ人格だという設定で、「DNAで全てが決まる」と思い込むことで自分を守ろうとする役割だった神楽が、リュウと早樹のつながりを通して「そうではない」と気づくようなストーリーになっているのかなと思いました。

原作で最も不満だったミステリ部分、つまり犯人の水上については映画ではよく描かれていたと思います。原作では水上は人間の精神を操りたいという動機でしたが、映画では優秀なDNAを使って優れた人間を作るということが動機でした。水上が女性に変更されていたので、「人間を作る」「神楽を見守る」という2つの視点が生きたものになっていました。
「お母さんと呼んでくれない?」と言った水上を撃つ神楽のつらい気持ちも伝わってきて、胸を打つシーンになっていたと思います。
原作では浅間の危機を救うために水上を撃っていて、浅間が上層部と取引して神楽は無罪放免になっています。映画ではその後は描かれていませんが、無罪…では済まないかも知れませんね。

ニノが挨拶でお気に入りのシーンとして挙げた、浅間と水上の公園のシーンですが、
「急に強い風が吹く様子が不穏なものを感じさせて、犯人を暗示するシーンになっているところがいい」
というようなことを言っていました。

人気のスタジアムのシーン、あそこは神楽なのかリュウなのかってことで、インタビュアーさんが
「あれは神楽でいいんですよね?」とニノにわざわざ確認してましたが、
「ええ、神楽です」と言ったあと、
「神楽→リュウ→神楽、ですね」と言い直してました。
観てる時に、「あ、リュウだ」と思ったのですが、やはり途中でリュウになってたんですね。後に浅間が「直接会うのは2回目」と言ってたので、1回目はこの時だと考えられます。「(早樹は)痣なんてなかったよ」っていう発言がリュウだと思います。この矛盾した発言が、早樹の絵に隠されたモーグル(真のプラチナデータを捜索するためのプログラム)発見につながってるわけですね。

一番の変更点は神楽と逃避行する少女スズランがいなかったことです。
スズランは神楽が作り出した幻覚でした。確かに原作を読んだ時に、あまりにリアルな存在感に違和感を感じたのですが…。スズランは蓼科早樹を具現化したものだったので、映画ではそこをすっ飛ばして早樹本人にしてしまったんですね。そのため、結婚式のまね事や、ラストに残されたウェディングドレス姿のスズランの絵という、原作で好きだったシーンがなかったのは残念でした。
でも、映画での早樹本人との心の通い合いを表したラストシーンは温かく、心に残りました。早樹の儚げな雰囲気と、リュウが愛しい人を見つめる表情が素敵でした
舞台挨拶の別の回で、このシーンのニノなりの解釈を話したそうで、聞きたかったです

神楽とリュウ、2つの人格なんてニノはお手の物だろうな~と思いました。あと2つくらい人格があっても難なく演じられるんじゃないかと。リュウの表情、好きです^^
あと、ニノはほんとによく走ってました!WSで監督さんとのインタビュー観たんですが、神楽がぶつかる人を監督さんが時々変えてて、「この人当たっていい人なのかな?」と思うこともあったのだとか(笑)そのことを思い出しながら観てました(笑)
工場のシーンではケガしちゃったんですよね

豊川さんの浅間。かっこ良かったです!神楽を追いながら、神楽に対してだんだん気持ちが寄り添っていく様子がよく分かりました。スタジアムのシーンで、フェンス越しに手を握り合ってもおかしくない雰囲気でした
豊川さんは昔から好きな俳優さんなのですが、やはり魅力的でした

WS見直して、映画ももう1度観てみたいなあと思います^^