世界の四大花園を行く  野村哲也

イメージ 1

先日、田舎の山道を歩く機会がありました。路肩には、ヒメジョオンキツネノボタンなどの春の花が咲き乱れ、自然の気持ちよさを感じながら歩きました。
家の庭も、植えていない花がどこかから種を飛ばしてやってきて、咲いています。
手つかずの場所があれば、いつの間にか草が生え、花を咲かせます。そんな植物の圧倒的な力強さと、美しさを伝えてくれるのがこの本です。

世界各地を旅して、風景や動物、そして花を写真に撮っている野村哲也さん。
紹介されているのは、ペルー、南アフリカ、オーストラリア、チリの4カ国です。砂漠地帯の荒涼とした大地に、雨期や霧を経て水を含んだ種が芽を出し成長して、信じられないほど美しい花を咲かせます。
その規模と来たら…見渡す限り一面の花園です。
シードバンクといって、1平方mあたり何万もの種が土地に蓄えられているそうです。それが、一斉に花開いた様子は、まさに天空の、神々の庭です。

しかも、目にも鮮やかな蛍光オレンジやイエロー、ピンクなどの花が多く、一説には、生存競争を勝ち抜いて虫の目に留まるようにだとか。
もちろん、青や白などの花もあって、それらが混在して美しいタペストリーとなります。

同じ場所を、花期でない時期に写した写真が掲載されているものもあり、こんな何にもない土地にこれほど花が咲くなんて驚きです。日本なら、花がない時期でも葉は残ってることが多いですが、赤茶けた大地にゴロゴロした石と、茶色く枯れた茎があるだけです。
乾燥している間、じっと耐えていて、時期が来ると一気に花開くんですね。

外国産の花もけっこう日本に入ってきていて、アルストロメリアや麦わら菊などはよく目にします。
全く同じではなくても、デイジーやアヤメなど、形を見るとなじみがある花もあります。
でも、全く見たこともない花にこの本で出会いました。

1つはオーストラリアのリースフラワーです。放射状に伸びた茎の先に、黄色とピンクのグラデーションの花を咲かせます。他に何もない地面にぽんぽんと置かれたクリスマスリースのようでかわいらしいです。

もう1つはチリのガラ・デ・レオンです。荒れた岩肌に、地面を這って長く伸びる茎、フリルのように波打った葉、その先に、君子蘭のように球状に花がついています。赤と黄色があり、黄色は十数年前に発見されたばかりだそうです。

2つとも形が変わっているうえ、花の美しさも驚くほどです。これが改良されたわけでもなく、自然に咲いているなんて…。世界にはこんな風に、まだ見たことがない花が山ほどあるんでしょう。そういう花を実際に目の前で見られる野村さんがうらやましいです。

風景や花園の素晴らしさを伝えるエッセイも読み応えがあります。
この本は新書サイズで、リーズナブルに楽しめるのがいいですが、読むとこの広大な花園を、大きな写真で見たいという気持ちがすごく湧いてきます。ぜひ次は、写真集で見てみたいです。