NOVA1 書き下ろし日本SFコレクション  大森望編

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「ハーモニー」以来ひさびさに読んだ日本SFです。
この「NOVA」のシリーズは全て書き下ろしなのが嬉しいです。

全11作の中から、印象的な作品を挙げます。

「忘却の侵略」  小林泰三
実際に観察するまでは、その状態が定まらないという「シュレディンガーの猫」の理論を元にした侵略ものです。これにちょっとドタバタしたラブコメ要素が入ってるのが面白いです。

エンゼルフレンチ」  藤田雅矢
無人探査機をシチュエーションに、ドーナツをガジェットにして絡めているのが巧いです。
切なさのある恋愛ストーリーも良いです。

「ガラスの地球を救え!」 田中啓文
地球侵略の危機をいかにして脱するのかという物語です。タイトルで分かるように、手塚さん出てきます。それだけじゃなくてあの人もこの人も…。ふざけているようでいて、SF者にはちょっと感動できるラストかも。

これから三作、テキストやデータによって現実を改変する物語が続きます。

「黎明コンビニ血祭り実話SF」  牧野修
すごいタイトルですね^^;
戦隊もの&スプラッタなSFです。テキストによる攻撃方法で、書かれた通りに相手がダメージを受けます。
だんだんエスカレートするので、ダメな人はダメかも^^;

「Beaver Weaver」  円城塔
大森さんの前書きに、「派手なスペースオペラ」とありましたが、どう派手でどうスペースオペラなのか理解できませんでした^^;
論理と時間をかみ砕いて細分化し縮めてしまう海狸(ビーバー)によって、翻弄される人間たちの姿を描いている作品だと思います(たぶん)

「自生の夢」  飛浩隆
データを食い荒らす「忌字禍(イマジカ)」を滅ぼすために召還された殺人者と、インタビュアーの会話を中心にした作品です。
膨大なデータを元に、現実にある物が何でも作れてしまうというのは、いまだに理解しがたい「3Dプリンター」を思い出しました。
ガジェットは現実風なのですが、夢と現実の間をさまようような書き方がされているのが印象的です。

屍者の帝国」  伊藤計劃
夭逝した伊藤さんの未完の作品をそのまま載せたものです。このあとを円城さんが書き継いで、出版されました。
難解な作品の後だったので、この作品の分かりやすさと設定にすごく惹き込まれました。
死者にデータをインストールすることで動かし、労働用として使うっていうのが、現代風フランケンシュタインですね。他にも有名作品の登場人物が出てきて楽しめます。
このわくわくするストーリーが、円城さんの味付けでどう展開するのか…願わくは、このままの分かりやすさで進んでほしいものです。

SFを読み慣れた人向け…という感じのマニアックな作品が多かったような気がします。
特に、円城さんの作品は敷居が高いです。分かる人は分かるんでしょうか。
でも、全体を通して、あ~SFを読んだなあ、という気持ちにはすごくなりました(笑)