ビブリア古書堂の事件手帳4~栞子さんと二つの顔~  三上延

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今までは章ごとに選ばれる本が違っていたのですが、今回はすべて江戸川乱歩で、内容も1つの謎を追いかける長編になっています。

私の乱歩の読書歴は、児童向けのシリーズではなく…臙脂色の表紙で、妙にしっとりとした質感の分厚いシリーズを図書館で借りて読んでいたのは中学生の頃でした。「孤島の鬼」「陰獣」等々、少々中学生には刺激が強い内容でしたが、初めて読むタイプの作品にはまって続けて読んでいました。
それで、この物語にも懐かしさと親しみを感じましたが、どちらかというと読んでいなかったものを中心に展開してました^^;

栞子さんと大輔は乱歩のコレクションが全てそろった家に招かれ、それらを全て売りたいという話とともに、開かない金庫を開けてくれるように頼まれます。

見つからない金庫の鍵、見つからない一部のコレクション、そして金庫を開ける最後のキーワード…二重三重に仕掛けられたトリックは読み応えがあります。
その全てが乱歩に関わりがあり、次々に挙げられる作品名と、それらにまつわる話はマニアにはたまらない内容だと思います。
二銭銅貨」は読んでおくべきだったなあ…と思いました。

そしてこの巻から栞子の母親智恵子が登場します。
珍しい古書のためなら手段を選ばない彼女は、栞子を始め、周囲と軋轢を生みます。
人間的に問題はあるものの、やはりそれだけではなかったのですね。もう少し素直に感情表現ができる人であれば…と思います。
とは言え、あまり好感がもてるキャラじゃないので、母親の誘いに対して栞子が放った一言には溜飲が下がりました。

大輔の恋愛も一歩踏み出したようで。いいところで終わってましたが、ぜひこのまま進展してほしいものです。