増山超能力師事務所  誉田哲也

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超能力が正式に認められるようになり、設立された超能力師事務所に持ち込まれる事件を解決する連作短編集です。

超能力師協会設立にも関わった、ずば抜けた超能力師である、所長の増山。
二級超能力師の免状を持つ、健と悦子。二級に合格したばかりの篤志。超能力は持っていない事務の朋江。このメンバーに、どこから見ても女性の明美(あきよし)が加わります。
物語によって、視点となる登場人物を変えた構成になっています。

超能力を利用していることを除けば、扱っている依頼内容は興信所と同様の物が多いです。前半までは、事件も深刻なものはなく、表紙から受ける印象通り、コミカルでどたばたした雰囲気です。超能力がなくても、がんばれば解決できるんじゃないの?という感じの事件も。
資格試験のために必死で勉強したり、新人教育の話があったり、ごく普通の会社の事務所と変わりない気がしました。

ずっとこういう路線でいくのかと思っていたのですが、だんだんと深刻な方向に。
超能力を持っていることは、一般人から見ると便利そうな印象もありますが、後半は、それが様々な苦悩を伴うことに焦点を当てた展開になっています。
それにつれて、事件の内容も警察が関わるような大きな事件へと変わっていきます。
特に、飄々としている増山の抱えている秘密は重いです。
まるで宮部さんの作品や、サイキック映画を彷彿とさせるような展開で、始めのとぼけた味わいはどこかに行ってしまいました。

超能力者以外にも、社会的マイノリティとされる人々に目を向けた内容が印象に残りました。
ただ、けっこう男性に都合の良い解釈や表現(浮気の正当化など)が目立っていて、それが気になったのがマイナス要素でした。