夢見る宝石  シオドア・スタージョン

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夏になるとSFが読みたくなります。
SFマガジン9月号も「夏の必読SFガイド+α」の特集でした。でも、これ同じ作家の作品が入りすぎな気がします。ディックは6作も入ってます。
スタージョンの作品が入ってないなんて!「夢見る宝石」ぜひ入れてほしかったです。

原題も「Dreaming Jewels」と邦題と同じです。表紙の、本当に夢を見ているような宝石、白の空間を生かした装丁が素敵です。

養父母にいじめられている少年ホーティは、養父のせいで大けがをして、おもちゃのジャンキーとともに家から逃げ出します。偶然停まっていたトラックの荷台に乗り込みますが、それは、フリーク・ショーを売り物にするカーニヴァルのトラックでした。
団長のモネートルは、不思議な力を持つ水晶を蒐集していて、それを悪用しようとしていることにホーティは気づきます。

始めはとてもSFとは思えないのですが、モネートルが水晶を使って実験をするあたりから急にSFらしくなってきます。
水晶の正体と、それらが持つ本当の力とは?
この謎に加え、ホーティの成長物語と、カーニヴァルのメンバー達との交流と愛情が描かれ、心温まるパートになっています。
特に、ホーティに限りない愛情を注ぎ、様々なことを教え込むジーナと、知性と能力を兼ね備えた魚男ことソーラムが印象に残ります。

人間への憎悪を水晶に放射するモネートルと、水晶から得た能力でみんなを守ろうとするホーティの対決は、予想がつかない展開でした。
人間たちの戦いをよそに、あくまでも宝石の立場を崩さない美しく涼やかな水晶たち。
でも、その力ははかり知れません。登場人物に与えている驚くべき影響には唖然とすること間違いないです。

そしてほのぼのと心に残るラストは、ぜひ多くの人に読んでもらいたいシーンです。

巻末に載っているスタージョンの人物と作品紹介も読み応えがあって、これからスタージョンを読みたいと思っている人には良い一冊だと思います^^