天使と悪魔  ダン・ブラウン

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以前から持っていた原作、先日遅ればせながら映画を観たことで、ようやく手に取りました。先に読むつもりで映画を観てなかったのですが、結局映画が先に^^;

大量の反物質の生成に成功した科学者が殺され、反物質が盗まれます。これは、他の物質とぶつかると巨大なエネルギーを発生させ、街を吹き飛ばすほどの威力を持つのです。
科学者の胸に押された焼き印から、象徴学者であるロバート・ラングドン教授は、それが秘密結社イルミナティのものだと気づきます。

その頃ヴァチカンでは、新しい教皇を選出するコンクラーベが行われようとしていました。しかし、新教皇の有力な候補4人が誘拐され、1時間に1人ずつ殺すという脅迫電話が…。
ラングドンは科学者の娘であるヴィットリアと共に、前教皇の侍従(カメルレンゴ)であるカルロ・ヴェントレスカの協力を得ながら捜索を開始します。制限時間内に教皇候補を助け、反物質の奪回に成功する事ができるのでしょうか。

始めの方はセルン(欧州原子核研究機構)でのシーンがメインなので、図版も「高エネルギー粒子の衝突のシミュレーション」など物理的なものが多いです。歴史的建造物や美術品の写真のことしか考えてなかったので、驚きました。
ラングドンがX-33という、実際は計画が頓挫した宇宙航空機に乗ってセルンまで連れて来られるのも面白いです。

映画では『ダ・ヴィンチ・コード』の方が先でしたが、原作では『天使と悪魔』が第一作なので、ラングドンが若々しい雰囲気です。全く畑違いのセルンで戸惑う様子も可愛らしいです。全体的にアクションが多く、映画にはなかった、クライマックスでのヘリコプターの同乗や、ヴィットリアとの恋愛も、この頃のラングドンには似つかわしい感じがします。

イルミナティと思われる犯人の犯行声明により、教皇のいる場所は「土・空気・火・水」に関わること、「啓示の道」という言葉から、イルミナティが会合を開いていた秘密の教会に至るルートであることを見抜いたラングドンは、ヴァチカンの記録保管所に入る許可をもらって調べます。

映画では四元素に関わる四つの場所の探索はすごいスピードでしたが、本ではじっくり謎解きと美術品の写真を楽しみながら読めるのが良かったです。
また、実際にヴァチカン市国を訪れたことがあるため、サン・ピエトロ広場の喧噪、システィーナ礼拝堂の「最後の審判」の圧倒的な存在感を思い出すだけでも、この作品をよりリアルに楽しめる気がしました。もう二度とイタリアやヴァチカンを訪れることはない気がしますが、一度でも本物を見ておいて良かったと思います。

ヘリコプターのシーン、ラストの大聖堂のバルコニーのシーン、劇的でした。映画ではサン・ピエトロ広場での撮影が許可されず、セットだったそうなので、バルコニーではなく、室内になってしまったのでしょうね。原作でのこのシーンはもう目に鮮やかに映像が浮かぶようでした。

映画では描かれなかった、犯人が犯行に至るもう一つの背景が驚くべきものでした。これを映画で省いてしまったのはもったいない気がします。宗教的に問題になりそうなエピソードなので省かれたのでしょうか?
宗教と科学の対立という古くからのテーマを、一貫して描ききっているところが読み応えがありました。
教皇になる枢機卿が映画と原作で違っているのは驚きでしたが^^;

次は、順番で行くと『ロスト・シンボル』なのですが、映画化されてない上にヴィジュアル愛蔵版さえも出てないのは、不人気なのでしょうか?先日公開されたばかりの『インフェルノ』を観たいので、飛ばして『インフェルノ』を読もうかな?思ってます。