7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー

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新本格の作家さん揃い踏みで、有名な名探偵が活躍する作品と、変化球の作品で構成されてます。

『水曜日と金曜日が嫌い一大鏡家殺人事件一』 麻耶雄嵩
麻耶さんと言えばメルカトル鮎
美袋三条は道に迷い、見つけた洋館に助けを求めます。そこで不審な人物を目撃し、その後殺人が…。
新本格らしい舞台と、トリック、そして犯人。麻耶さんにしては、ある意味安心して読める作品でした。タイトルが謎ですが…

毒饅頭怖い 推理の一問題』 山口雅也
タイトルから分かるように、落語を下敷きにした時代物です。謎解きも、推理というより、頓智といった趣です。

『プロジェクト:シャーロック』 我孫子武丸
入力したデータを分析、検証して、犯人を推理するAI(シャーロック:シグマ)。開発者の木崎が殺害される。犯人は?
なるほど、シャーロックとなるとやはりそうなりますね。安易に操作される実行犯たちを見ると、人気の英国ドラマを思い出します。

『船長が死んだ夜』 有栖川有栖
モテ男の元船長を巡る三角関係の末、船長が殺される。犯人は二人の女性のうちのどちらかなのか、それとも女性の夫なのか?
火村とアリス登場。相変わらずの二人のやり取りが微笑ましいです。
オーソドックスなミステリですが、ポイントの剥がされたポスターの使い方が犯人に結びつくところはさすがです。

『あべこべの遺書』 法月綸太郎
探偵の綸太郎と、法月警視登場です。
それぞれが相手の部屋で見つかった恋敵同士の男二人は、相手が書いた遺書を持っていました。
二人の会話で事件について語られ、綸太郎が様々な可能性を挙げ警視が却下するという方法で推理は進みます。
なかなかユニークなシチュエーションで、どういう決着を見せるのか、楽しんで読みました。

『天才少年の見た夢は』 歌野晶午
歌野さんらしい異色の作品です。それぞれが才能を持った少年少女が集められた施設。戦争が起き、現在はシェルターとして使われています。外の様子が分からないまま暮らす彼らでしたが、一人また一人と亡くなっていきます。
犯人は意外でしたが、動機に今ひとつ納得がいきませんでした。ですが、一番の驚きは犯人でも事件でもないというのが、本作の面白さでしょう。

『仮題:ぬえの密室』 綾辻行人
アンソロジーの執筆を頼まれた綾辻さんが、困っているうちに、新本格のミステリ作家の中で出てきた謎の作品『ぬえの密室』の謎を解くというメタミステリ形式の作品です。
綾辻さんと、奥さんの小野不由美さん、法月さん、我孫子さんが登場します。
設定は面白いけど、謎の作品について煽るだけ煽ったわりには結末はあっさりでした。
ラストの謎の人物の正体が、やっぱりね、という感じでした。

タイプの違う作品を集めているので、退屈せずに読めます。一口に名探偵と言ってもいろんな探偵がいるものだなあと思いました。