検察側の罪人 雫井脩介

　　　　　　　　　　　　　　

木村くんがベテラン検事の最上、二宮くんが新進気鋭の検事である沖野を演じる映画が公開予定の話題作です。
２人を思い浮かべて読むと、けっこうイメージ的にはまるかもです。

最上が法学部の学生時代にお世話になった寮母の娘由季が暴行されて殺されるという事件があり、犯人は捕まらないまま時効を迎えていました。その時犯人の疑いが強かった松倉は、決め手がないまま釈放されていました。
そして２３年後の現在、金貸しの老夫婦が殺害された事件の関係者の一人として名前が挙がったのがその松倉でした。
松倉が犯人であるという物証は乏しかったのですが、今度こそ松倉を逃がしたくないと考えた最上は、犯罪に手を染めていくことに。

沖野は最上に言われるまま、松倉を追い詰めますが、だんだんと最上の態度と行動に疑問を抱き始めます。

沖野にとって憧れの存在だった最上と対立し、しかも最上の犯罪を暴く立場に立つことになる沖野の苦悩は計り知れないものがあります。
ですが、例え松倉が悪人でも、犯してもいない犯罪の罪をかぶせることは沖野にはどうしてもできませんでした。

読んでいてずっと思っていたのですが、最上は他の犯罪を犯すくらいなら、何で松倉本人を殺さなかったのだろう、と。

でも、最後の方で出てきますが、それは検事でない人間の考え方だそうです。きちんと法廷で裁くと共に、やってもいない罪で裁かれることのつらさを負わせるということが検事として最大の復讐になるということのようです。

でも、何か納得できないものを感じるのは、最上が犯罪を憎んでいながら、自分も犯人と同じ所に身を落としてしまうという事です。

ラストの沖野の咆哮が本当につらく、やり切れない気持ちになりました。