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ゲームをテーマにしたSFアンソロジーです。
人気タイトル作のいくつかはプレイしたことがあるので、私も一応ゲーマーの端くれと言ってもいいかも。
ゲーム的な設定だけの作品から、ゲームと現実がクロスするVR的なもの、古き良きテキストアドベンチャー形式のものなどさまざまです。
全12編の中から、特に印象に残った作品を挙げます。

「猫の王権」 チャーリー・ジェーン・アンダース
病気のために他人とのコミュニケーションが難しくなったパートナーのシェアリーのために、認知症患者に効果があるという「猫の王権」を買って取り組ませます。シェアリーはめきめきと頭角を表し、このゲームをするプレイヤーの集まりにも参加するようになります。
シェアリーが生き生きと活動することを嬉しく思いながら、現実世界よりも、ゲームの中に生きる場所を見つける彼女に複雑な思いを抱く主人公の心情を描いています。
ゲームの持つ利点と問題点を明らかにしたような作品です。「猫の王権」はもちろん架空のゲームですが、こういう建国系(ストラテジー)のゲームは判断力が必要なので、確かに脳トレには良さそうです。

サバイバルホラー」 ショーナン・マグワイア
新しいホラー系のパズルゲームをダウンロードしたアーティは、いとこのアニーと一緒にゲームを始めますが、そのとたん、足が部屋の床に固定され動けなくなります。どうやら、パズルを解いてゲームをクリアするまで解放されないようなのですが…。
映画の『ジュマンジ』的な設定です。ですがこちらは大冒険に出かけるわけではなく、子供部屋の中だけで事件が起きて解決するこじんまりとした展開です。でも何だかそこが微笑ましいです。

「キャラクター選択」  ヒュー・ハウイー
夫のサバイバル系のゲームに内緒で取り組む妻。そのゲームスタイルは夫のやり方とはまるで違っていました。
殺伐としたゲームの中で、妻が見つけた心温まるミニゲーム。最近のゲームはひたすら敵のボスを倒すのを目指すような一本調子のものは少なく、様々な楽しみ方ができるものが多いようです。
この物語では、妻が見つけたミニゲームの電話番号が思わぬ場所につながります。

「ツゥオリア」 アンディー・ウィアー
『火星の人』で一世を風靡したウィアーの、ユーモアのある小品です。
交通違反の記録が抹消されていることを知ったジェイクは、自分がかつて作ったゲームのプログラムが勝手に学習を続け、主人のためになると思うことを行っていることに気づきます。口は悪いけれど、ジェイクに忠実なプログラムのツゥオリアが憎めません。
ラスト、え、そんなこともできるの?というオチがユニークです。

「時計仕掛けの兵隊」 ケン・リュウ
賞金稼ぎのアレックスは、つかまえた賞金首のライダーを逃がそうと考えます。その理由は?テキストアドベンチャー形式の小説を主人公が読んでいくことで、自らの秘密を知るストーリーになっています。ケン・リュウらしい、ちょっと切ないラストが胸に残ります。 

ゲームが好きな人なら、共感したり、設定の妙に頷いたりするところが多々あると思います。出てくるのは架空のゲームばかりですが、既存のゲームと重なるところもあり、そのゲームを思い出してまたやってみたくなるかも知れません。