ウツボカズラの甘い息  柚木裕子

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初読みの柚月さん。先日再放送があった弁護士佐方シリーズ「最後の証人」を観たのですが、佐方のキャラが好きでした。

本作は嫌な話なのですが、やはりキャラが立ってる刑事のコンビ秦と中川のおかげで嫌さが軽減されてます。特に、中川は女性刑事ですが、最初に女性と組んだということで憂鬱だった秦がやがて気に入ったように、機転が利き、前に出る出ないのバランスが良いところに好感がもてました。

かつては評判の美人だったものの、精神的な病気になり太ったことで自信を失っている文絵は、小学校の同級生と言う加奈子からイベント会場で声をかけられ、加奈子の言葉でだんだんと自信を回復して元の美しさを取り戻し、マネージャーの章吾についてもらって高級化粧品のセールスをするようになります。セールスは成功し、順調に会員を増やしますが、加奈子と章吾が海外に出かけている間に、株式上場すると聞いていたのに一向に上場しないと会員から苦情の電話が次々にかかってきます。加奈子達とは連絡が取れなくなり…。

一方で秦と中川はある別荘で殺されていた男田崎の事件を追います。目撃されたサングラスの女とは誰なのか、文絵の事件と田崎殺害はどのように関わってくるのでしょうか。
それについてはだいたい予想がつくものの、驚くのは犯人のそれまでの犯罪の経歴とその方法です。そういうことももしかしたら実際に可能かも知れないと思えるところが恐ろしいです。文絵の病気のことも犯罪に利用され、使えるものは何でも使うんだなと驚きました。
言葉巧みに近づいて来て、甘い罠を張り、するりと心に入り込む、このような犯罪でなくても、宗教、勧誘、私達の周りにいくらでもありそうです。気をつけないと…と自分を戒めて読み終わりました。

残念だったのは、加奈子のその後は書かれていたけれど、文絵については書かれていなかったことです。ダンナさんの理解があることを願います。