蛮幽鬼 ゲキ×シネ

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WOWOWで先日の土曜に放送された「蛮幽鬼」。その日博多座で観た「魔界転生」の興奮も覚めやらぬまま、観始めました。観ていたら深夜になってしまったため、二回に分けて観ました。ネタバレもありますのでご注意ください。

モンテ・クリスト伯を下敷きにした復讐譚です。少し前、テレビでディーン・フジオカさん主演でドラマ化されたので、観る前に原作のストーリーをおさらいしてたので、予習はバッチリです。
無実の罪に落とされ、復讐鬼となる土門を上川隆也さん、恋人の美古都を稲森いずみさん、土門を脱獄させる謎の男サジを堺雅人さんが演じています。

身分は低いながら、蓬莱国の優秀な学生だった伊達土門は親友の京兼調部と共に将来国を支えるべく、学問に励んでいました。仲間の空麿と浮名は、師からも認められる土門を妬んでいました。そんなある日、土門は調部が殺されているのを発見します。犯人と間違えられ、召し捕られた土門は、空麿と浮名による嘘の証言で有罪とされ、監獄島に島流しになります。
そして10年の歳月が流れ、土門の前に同じく囚人のサジと名乗る男が現れ、土門を脱獄させてくれ、土門の復讐に協力します。
自由の身になった土門は10年の辛苦のために白髪になっていて、飛頭蛮と名乗って、親友の仇を討つために自分を陥れた者たちへの復讐を始めます。

土門の恋人だった美古都は、調部の妹なのですが、土門の無実を信じ続けるうちに、王に見初められ、土門は亡くなったと思い、国のために王の妃になります。王の死後は女王になり、蓬莱国を治めることに。

土門は自分を待たずに王と結婚した美古都のことも恨むようになります。そのため、今は大臣などになっている空麿と浮名も含め、蓬莱国自体を呪うようになります。
敵同士になってしまった土門と美古都が切ないです。

原作通りシリアスなストーリーなのですが、それでも前半は少しはコミカルなシーンや、ホッと一息つけるシーンも用意されています。
前半の白眉は、上川さんの歌って踊るシーンでしょう。上川さんはどこかで、歌は苦手だと言っていたようですが、山崎育三郎とまでは言いませんが、美声なので聴いていて気持ちが良いです。 上川さんのドラマでこれから歌が聴ける可能性は低そうなので、歌っている舞台は貴重ですね。あ、でも遺留捜査の糸村さんは突然思わぬ特技を披露することがあるので、歌も期待しましょう。

さて、上川さんと同じくらいの存在感を放っていたのが、堺雅人さんです。サジは暗殺者としての技能を叩き込まれた男ということで、随所で華麗な殺陣を見せてくれます。そして、どんな時も笑顔を崩しません。普段の堺さんのような微笑ではなく、もう爆笑に近いような笑顔で、それが怖いのです。人を殺す時も、自分が死ぬ時でさえ笑顔です。サジにはさまざまな秘密があり、物語のキーマンになります。

ラスト、土門とサジの壮絶な死闘があり、勝った土門ですが、すでに致命傷を負っていました。女王としての美古都の立場を考え、自分は国賊として死にたいので自分を討つようにと美古都に頼みます。最後にやっと、美古都の本当の気持ちが分かったのですね。泣く泣く土門に剣を向ける美古都。彼は美古都の手を取り、自分の胸に深く突き刺します。
最後に、美古都は女王として国賊を討ったことを国民に高らかに宣言します。愛する者を失った慟哭を胸に秘めながら…。
上川さん、稲森さんの演技が素晴らしく、胸を打たれました。このラストシーン、舞台で見たらきっと号泣でしょう。

メインの三人に加え、美古都の忠臣である刀衣を演じる早乙女太一さんもさすがの殺陣と美しい身のこなしで目を惹きました。

これだけ感情を揺さぶられるような舞台、役者さん達も渾身の演技で、よくこれを何日も続けられるなと思いました。でも、ほんと、実際に舞台で見てみたかったと思います。