カササギ殺人事件  アンソニー・ホロヴィッツ

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作者は女王陛下のスパイアレックスシリーズや、ホームズの公式続編を書いていて名前は前から知ってました。YA向け以外で書いた初のオリジナルミステリだそうで、それにしてもいきなりすごい作品を書いたものです。

上巻はまるまるミステリ作家アラン・コンウェイが書いた、探偵アティカス・ピュントシリーズの新作ミステリ、下巻はコンウェイの死を巡る、現実の事件を探るミステリという入れ子構造になったミステリです。

作者がクリスティのファンということで、クリスティにちなんだガジェットがあちこちに顔を出します。作品の中で触れられるので、分からないまま終わるということはありません。私が自分で気づいたのは数え歌くらいでしたが^^;
それと、狭い集落の中に隠された人々の悪意というのも、クリスティが好きな設定だった気がします。

上巻でピュントの事件は解決するのかと思ってましたが、そう簡単にはいきません。
小説の解決部分の紛失ということで、主人公の編集者スーザンも、読者も気を持たせられます。実は私はここでちょっと気が抜けて読むのがストップしました^^;
この紛失事件と、コンウェイの死がどう関わってくるのかというのが大きな謎になっています。

ミステリとしては、現実の事件よりピュントの事件の方が凝っていて読み応えがありました。犯人と、周辺人物の言動のつながりも、伏線が周到に張られていて、後で驚きがあります。
現実の方は、スーザンの人生に関わる選択や、心理面がよく描かれていて、こちらはこちらで楽しめます。
TVのミステリシリーズの脚本を書いていただけあって、並行して描かれているプロットがどれも一本のドラマとして成立するぐらい読み応えがあって、それが一冊にまとまっているという贅沢な作品です。
ミステリベスト10を席巻したのも納得の作品でした。