いのちのパレード  恩田陸

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異色作家短篇集」のオマージュとして書かれた、不思議なイメージの短篇集です。恩田さんがこの作品集に影響を受けたことを知って、親近感を感じました。
私にとっても「異色作家短篇集」は憧れの作品集で、いつか全部揃えることが夢です。大人買いすることも考えたことがありますが、一冊の値段も高いし、ライフワークにしてちょっとずつ古本で集められたらな~と思ってます。今持ってるのはロアルド・ダール「キス・キス」と、リチャード・マシスン「13のショック」だけです。「13のショック」は復刊前のシリーズ版です^^

一つ一つの物語がとても印象的なので、めずらしく全部の感想載せちゃいます。
「観光旅行」
抽選で選ばれる、村の観光ツアーの目玉とは…。
石が意志を持ってる…とそんな洒落が浮かんでしまいました…最初からすみません^^;

「スペインの苔」
スペインの苔が、彼女の人生にどう関わってくるのか?
悲惨な経験を苔の秘密として置き換えなければ耐えられなかったんでしょうね。怖いです。

「蝶遣いと春、そして夏」
春は蝶遣いの季節。蝶遣いが死者を弔う様子が描かれています。
イメージが非常に美しく、映像が目に浮かぶようです。

「橋」
これで浮かんだのは「20世紀少年」です。置かれている状況は深刻なんですが、下町っぽいやり取りが楽しいです。

「蛇と虹」
同じイメージを元にしながら、片方は恐ろしく、片方は美しい。残酷な童話のような感じです。

「夕飯は7時」
夕飯前のドタバタ劇が描かれていますが、そのドタバタの内容とは…。
楽しいです^^ドラマ「流星の絆」の三兄弟(大人の方)がなぜか浮かびましたw

「隙間」
人それぞれ怖い物は違いますが、隙間を異様に怖がる男の話。
でも、実際こういう人はいるかも知れませんね。そう思うとよけい怖いです。

「当籤者」
設定は不条理ですが、ちょっとミステリぽい趣もありますね。裁判員の封筒届いた人も、これほどじゃないにしろ困ったでしょうね…。

「かたつむり注意報」
パトリシア・ハイスミスの短篇にもかたつむりのありましたね。あれは相当気持ち悪い話でしたが、これは気持ち悪いのか美しいのか微妙です^^;

「あなたの善良なる教え子より」
よかれと思ってしたことが…。この手紙を受け取った先生の衝撃はいかばかりでしょう;;

「エンドマークまでご一緒に」
恩田さんはミュージカル好きなのかな?私は苦手なのですが、日常の場面に唐突に歌と踊りが入るミュージカルの特徴を皮肉った作品として読みました。ラストがちょっとあんまりかな…。

「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
川又千秋さんの初期の作品集に「人形都市」というのがありますが、それらのイメージに似通ったものを感じました。

「SUGOROKU」
ジュマンジ」のような楽しい話かと思いきや…。脱落した者や上がった者はどうなるのか…。各部屋で行われていることの意味は?

「いのちのパレード」
帯に書かれている言葉が出てくるのかと思いましたがありませんでしたね^^;
「私たち」というのは今の人類なのでしょうか。恩田さん流の警鐘ととらえて読みました。

夜想曲
これだけが書き下ろしです。恩田さんはかなり苦労してこの短篇集を書かれたそうなので、こんな3人がいつもいてくれるといいなあと思って書かれたのかも知れませんね。

特に印象に残ったのは「スペインの苔」「蝶遣いと春、そして夏」「夕飯は7時」です。
恩田さんの想像力が十二分に楽しめる作品集でした^^長編よりも私は気に入りました。「奇想コレクション」や「KAWADE MYSTERY」のシリーズが好きな方にもおすすめです^^





『蝶遣い~』は恩田さんの文章力と想像力の素晴らしさが表れている作品だと思います。「夕飯~」もコミカルで面白かったですね。恩田さんのイマジネーションの結晶のような作品集だと思いました。装丁もかっこよくて気に入ってます^^ 削除

2008/11/30(日) 午後 11:51 べる 返信する
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>べるさん
「蝶遣い~」は素敵な作品でしたね。まるで詩のようです。何回も読み直して味わいたい作品だと思いました。
一つ一つの作品に新鮮な驚きがあり、とても楽しめました。短編が気に入ったので、次は「朝日のようにさわやかに」を読んでみることにします^^ 削除

2008/12/1(月) 午後 7:36 ねこりん 返信する
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恩田さんの本は装丁がいいなぁ、と思うことが多いです。私は『夜想曲』が好きですね~♪
こちらからもトラックバックさせて下さい♪ 削除

2008/12/1(月) 午後 11:12 智 返信する
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「夕飯」がツボでした。子供から語源を知らず使っている言葉の質問を受け、改めて辞書で語源を知り、目から鱗な毎日なもので…。先日も「つんつるてん」と「ちんぷんかんぷん」を質問されたばかりです(^_^;)
トラバ返しさせてくださいね♪ 削除

2008/12/2(火) 午前 8:19 金平糖 返信する
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>智さん
夜想曲」は普通なら結びつかないものが手を取り合って創作するというところがいいですね^^
装丁は、まず写真が秀逸ですよね~。この写真集を見てみたいです^^ 削除

2008/12/2(火) 午後 8:10 ねこりん 返信する
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金平糖さん
この作品を地でいってるような生活ですねw
お子さんと一緒に、しっかり勉強なさってるご様子、目に浮かんでほのぼのさせて頂きました^^ 削除

2008/12/2(火) 午後 8:12 ねこりん 返信する
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私もこの一見“写真集?”と思うくらい洒落た装丁がお気に入りでした^^まだ20世紀少年を見ていないのですが、「橋」は好きだったので似た雰囲気なら楽しめるかな^^こうなると「走り続けよ~」を挫折してしまったのが勿体なく感じてしまいますね^^;
こちらからもTBさせてくださいね。 削除

2008/12/8(月) 午後 11:29 紅子 返信する
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>紅子さん
私も映画の「20世紀少年」は見てないんですよ~。似てると思ったのは原作マンガの方です。映画もいつか見たいと思ってるんですが。
「走り続けよ~」は重厚かつ退廃的な雰囲気がなかなかいいな、と思ってます^^ 削除

2008/12/9(火) 午後 9:24 ねこりん 返信する
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「蝶遣いと春、そして夏」は私も大好きな作品です。読み終わってしばらくしてもイマジネーションの素晴しい作品は色あせませんね。恩田さんのお気に入り本になりました^^。
TBさせてください。 削除

2008/12/17(水) 午後 7:14 しろねこ 返信する
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>しろねこさん
「蝶遣い~」の幻想的な雰囲気は外国のファンタジー絵本のようでした。文章だけで光と闇、色と香りが感じられるのはすばらしいですね。
他の作品もそれぞれの良さがあって、この一冊にまとまっていることがとても嬉しい気がします^^ 削除

2008/12/17(水) 午後 8:34 ねこりん 返信する